「特定口座」の源泉徴収あり・なしはどちらを選ぶべきか——NISAと合わせて元財務責任者が解説

証券口座を開設するとき、「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」という3つの選択肢を前に、迷わず次に進んだ方は少なくないと思います。多くの方は「よくわからないけれど、とりあえず源泉徴収ありにしておけば安心なのだろう」という感覚で選んでいます。

結論から言えば、その感覚は間違っていません。給与所得者の大多数にとって、特定口座(源泉徴収あり)は合理的な選択です。ただし「あり」を選んでいれば思考停止していい、という話でもありません。損益通算や繰越控除を使いたい場面では、源泉徴収ありを選んでいても確定申告をした方が得になるケースがありますし、そもそも「なし」を選ぶべき人も一定数存在します。この記事では、特定口座の仕組みと、源泉徴収あり・なしをどう選ぶべきかを、財務の実務に携わってきた立場から整理します。

特定口座とは何か——一般口座との違い

証券口座には大きく分けて「特定口座」と「一般口座」の2種類があります。この違いを理解しないまま話を進めると、源泉徴収あり・なしの議論がかみ合わなくなるので、まず整理しておきます。

一般口座は、株式や投資信託の売買損益を、投資家自身がすべて計算しなければならない口座です。年間の取引明細を自分で集計し、取得価額を管理し、損益を計算して確定申告書に記載する。これを手作業でやろうとすると、かなりの手間がかかります。

これに対して特定口座は、証券会社が1年間の売買損益を計算し、「年間取引報告書」という形でまとめてくれる口座です。取得価額の管理も証券会社が代行してくれるため、投資家が自分で損益計算をする必要がありません。現在、証券口座を新規で開設する方のほとんどは特定口座を選んでいますし、実務的にもそれが妥当な判断です。一般口座を積極的に選ぶ理由は、非上場株式を保有しているなど特殊な事情がない限り、基本的にはありません。

そして特定口座には、さらに「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」という2つのタイプがあります。ここからが本題です。

源泉徴収あり・なしの違い——「税金が天引きされるかどうか」

源泉徴収あり・なしの違いは、一言でいえば「証券会社が税金を天引きしてくれるかどうか」です。

源泉徴収ありの口座では、株式や投資信託を売却して利益が出るたびに、証券会社が自動的に約20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金を差し引き、投資家に代わって納税してくれます。配当金についても同様に、受け取り時点で税金が天引きされます。この仕組みがあるため、源泉徴収ありの口座だけで取引が完結している場合、投資家は原則として確定申告をする必要がありません。

一方、源泉徴収なしの口座では、証券会社は損益の計算はしてくれるものの、税金の天引きは行いません。年間の利益がプラスであれば、投資家自身が確定申告をして納税する義務があります。

ここで「税金を天引きされない方が得なのでは」と感じる方もいるかもしれませんが、話はそう単純ではありません。天引きされないということは、納税義務がなくなるわけではなく、単に「自分で申告して納める」という手間が発生するだけだからです。むしろ多くの方にとっては、天引きしてもらえる源泉徴収ありの方が、手間もリスクも小さくなります。

税率20.315%の内訳を正確に知っておく

先ほど「約20.315%」という数字を挙げましたが、この内訳を知っておくと、確定申告をする・しないの判断材料が増えます。内訳は、所得税15%、復興特別所得税0.315%(所得税額の2.1%相当)、住民税5%です。復興特別所得税は東日本大震災の復興財源として時限的に設けられた税で、2037年まで課されることになっています。

かつては、所得税では確定申告をしつつ、住民税だけは別途「申告不要」を選ぶことで、住民税分の課税方式を所得税と切り離せる仕組みがありました。しかしこの選択制度は、2023年分の所得(2024年度の住民税)から廃止されており、現在は所得税の確定申告をすれば、住民税にも同じ課税方式が自動的に適用される形に一本化されています。古い情報がインターネット上に残っていることもあるため、「住民税だけ別扱いにできる」という以前の説明を見かけても、鵜呑みにしないよう注意してください。

源泉徴収「あり」を選ぶべき人

私が財務の実務で家計や資産形成の相談を受ける中でも、源泉徴収ありを勧めるケースが圧倒的に多いというのが実感です。特に、以下のような方には源泉徴収ありが向いています。

会社員・公務員などの給与所得者は、源泉徴収ありを選んでおくのが基本です。理由は、確定申告をしなくて済むという単純な手間の話だけではありません。投資の利益を確定申告してしまうと、その利益が「合計所得金額」に算入され、配偶者控除・扶養控除の判定や、国民健康保険料(会社の健康保険組合に加入している方は影響が小さいですが、家族の扶養に入っている場合などは注意が必要です)の算定に影響を与えることがあります。源泉徴収ありで確定申告をしなければ、この合計所得金額に投資の利益が反映されず、扶養から外れてしまうといった事態を避けられます。

特に配偶者の扶養に入っているパート・アルバイトの方や、親の扶養に入っている学生の方は、この点を軽視すべきではありません。「株で少し利益が出たから確定申告した」だけのつもりが、扶養控除の対象から外れて世帯全体の税負担が増える、というケースは実際に起こり得ます。源泉徴収ありを選んでおけば、こうした意図しない影響を避けやすくなります。

また、単純に「確定申告の手間をかけたくない」という方も、源泉徴収ありで問題ありません。証券会社が税金の計算と納税を代行してくれる仕組みは、そのために存在しています。

源泉徴収「なし」を選ぶべき人

一方で、源泉徴収なしが向いている方も一定数存在します。

代表的なのは、年間の給与所得や事業所得が少なく、そもそも課税所得が発生しにくい方です。例えば学生や専業主婦(主夫)で、他に大きな所得がない場合、基礎控除(48万円)などを考慮すると、投資の利益がある程度の金額までは実質的に非課税になることがあります。この場合、源泉徴収なしを選んで確定申告をすれば、天引きされた税金相当額を払わずに済む、あるいは還付を受けられる可能性があります。ただし、この判断は世帯の所得状況によって変わるため、安易に「学生だから源泉徴収なしが得」と決めつけず、自分の所得全体を踏まえて判断する必要があります。

もう一つは、複数の証券会社に口座を持ち、口座をまたいで損益通算をしたい方です。実はこのケースは、源泉徴収ありを選んでいても対応できます。次の章で詳しく説明します。

「源泉徴収ありなら確定申告不要」の落とし穴

源泉徴収ありの口座を選ぶと「確定申告は一切不要」というイメージを持たれがちですが、これは半分正しく、半分は誤解です。確定申告が「不要」なのであって、「してはいけない」わけではありません。そして、確定申告をした方が得になる場面は、意外と多くあります。

代表的なのが、複数の証券会社をまたいだ損益通算です。例えばA証券で50万円の利益、B証券で30万円の損失が出ていたとします。それぞれの口座が源泉徴収ありであれば、A証券では利益に対する税金が天引きされ、B証券の損失は特に何も起きません。しかし実際には、この2つを通算すれば年間の利益は20万円のはずで、50万円分の利益に対する税金を払いすぎている状態になります。この場合、確定申告で損益通算をすれば、払いすぎた税金の還付を受けられます。

もう一つが繰越控除です。ある年に投資で損失を出した場合、確定申告をしておけば、その損失を最大3年間繰り越して、翌年以降の利益と相殺できます。例えば今年30万円の損失が出て確定申告で繰越控除の手続きをしておけば、翌年40万円の利益が出たとしても、相殺後の10万円分にしか課税されません。この制度は「確定申告をして繰越控除の手続きを取っていること」が条件になるため、源泉徴収ありだからと申告を一切しないでいると、この恩恵を受けられないまま終わってしまいます。損益通算と繰越控除の具体的な計算方法は損益通算と繰越控除——投資家が活用すべき税務テクニックでさらに詳しく整理しています。

私が財務の実務で数字を扱ってきた経験から言えば、「確定申告が不要」という制度上の言葉を、「確定申告をしない方が得」と混同しているケースをよく見かけます。不要というのは義務がないという意味であって、有利不利とは別の話です。年間の損益がマイナスだった年や、複数口座での取引がある年は、一度、確定申告をした場合としない場合でどちらが得かを試算してみる価値があります。

確定申告をすると「損」になることもある——注意点

ここまで確定申告のメリットを説明しましたが、逆に確定申告をすることで損をするケースもあるため、フラットに触れておきます。

先ほど触れた通り、投資の利益を確定申告すると、その金額が合計所得金額に反映されます。国民健康保険に加入している方や、扶養控除・配偶者控除の判定に近いラインにいる方は、確定申告によって保険料や税負担が増えてしまう可能性があります。損益通算で数万円の還付を受けられたとしても、国民健康保険料がそれ以上に上がってしまえば、トータルでは損をすることになりかねません。

この判断は、投資の損益額だけでなく、世帯の所得構成や加入している健康保険の種類によって変わるため、一律の正解はありません。損益通算・繰越控除の恩恵と、合計所得金額が増えることによる影響の両方を見比べたうえで、確定申告をするかどうかを決める必要があります。迷う場合は、税理士や税務署の窓口に相談するのが確実です。

損益通算できる範囲——FXや暗号資産は対象外

損益通算という言葉を聞くと、「投資に関わる損益なら何でも相殺できる」と誤解している方がいますが、これは正確ではありません。特定口座の損益通算・繰越控除の対象になるのは、あくまで「上場株式等」に区分される金融商品です。具体的には、上場株式、株式投資信託、ETF、REIT(不動産投資信託)、公社債投資信託などが該当します。

一方で、FX(外国為替証拠金取引)や暗号資産(仮想通貨)の取引で生じた損益は、この「上場株式等」の枠組みには含まれません。FXの利益は「先物取引に係る雑所得等」という別の区分で申告分離課税(税率は同じく20.315%)になりますが、株式や投資信託の損益とは別枠で計算され、株式の利益とFXの損失を相殺することはできません。暗号資産に至っては「雑所得」として総合課税(他の所得と合算し、所得が多いほど税率が上がる累進課税)の対象になり、損失が出ても翌年以降への繰り越しもできません。

「今年は株で利益が出たがFXで大きく損をした、だから相殺されて税金はかからないはずだ」という考え方は、税制上は成立しないということです。複数の金融商品に投資している方は、それぞれの損益がどの区分に属するのかを、あらかじめ整理しておく必要があります。

NISA口座との関係——特定口座のルールは関係ない

ここまで特定口座の話をしてきましたが、NISA口座については、源泉徴収あり・なしという区分自体が存在しません。NISA口座で得た利益は、そもそも非課税だからです。売却益にも配当金にも税金がかからないため、確定申告の要否を考える必要もありません。

実務上よくある質問が、「NISA口座と特定口座を両方持っている場合、どう扱えばいいのか」というものです。答えはシンプルで、それぞれ独立して考えれば問題ありません。NISA口座内の損益は非課税なので申告不要、特定口座(源泉徴収あり)の損益は原則申告不要、という状態が基本形です。

ただし一点、見落とされがちな注意点があります。NISA口座で発生した損失は、特定口座の利益と損益通算できません。例えば特定口座で50万円の利益、NISA口座で20万円の損失が出ていたとしても、NISA側の損失はなかったものとして扱われ、特定口座の50万円の利益にはそのまま課税されます。NISAは非課税制度であるがゆえに、税務上の「損失」としても存在しないという扱いになるためです。この点は、NISAの非課税メリットの裏側にある制約として、覚えておく価値があります。

配当金の受け取り方式にも注意が必要

特定口座の話に付随して、意外と見落とされがちなのが「配当金の受け取り方式」です。上場株式の配当金の受け取り方には、証券口座でそのまま受け取る「株式数比例配分方式」、指定した銀行口座で受け取る「登録配当金受領口座方式」、配当ごとに送られてくる通知書を郵便局等で換金する「配当金領収証方式」など、いくつかの選択肢があります。

ここで重要なのは、特定口座(源泉徴収あり)で損益通算のメリットを最大限に活かすには、配当金の受け取り方式を「株式数比例配分方式」にしておく必要があるという点です。株式数比例配分方式以外の方式で配当金を受け取っている場合、配当金は特定口座の中で完結する扱いにならず、証券会社側で株式の譲渡損失と配当の利益を自動的に通算してもらえません。複数の証券会社で株式を保有している方が、口座ごとに受け取り方式がバラバラになっているケースを実務でも見かけますが、これでは特定口座の恩恵を十分に活用できていないことになります。証券会社のマイページなどで、一度、自分の受け取り方式を確認しておくとよいでしょう。

米国株など外国株式を保有している場合の注意点

特定口座で米国株など外国株式を保有している場合、配当金についてはやや複雑な扱いになります。米国株の配当金は、まず米国側で10%が源泉徴収され、さらに日本側でも約20.315%が課税されるという、二重課税に近い状態が発生します。特定口座(源泉徴収あり)であっても、この日本側の課税は自動で行われますが、米国側で天引きされた10%分を取り戻す「外国税額控除」は、源泉徴収の仕組みだけでは完結せず、別途、確定申告での手続きが必要です。この点は特定口座の源泉徴収あり・なしという区分とは別軸の話になるため、混同しないよう注意してください。外国税額控除の具体的な計算方法や、確定申告をした方がよいかどうかの判断基準は米国株の配当金、確定申告は必要か——外国税額控除の手続きを整理するで詳しく解説しています。

NISAと特定口座、どちらを優先して使うべきか

ここまで特定口座の話をしてきましたが、そもそも「投資資金をNISA口座と特定口座のどちらに振り分けるべきか」という、より手前の疑問を持つ方も多いと思います。結論はシンプルで、NISAの非課税枠(成長投資枠・つみたて投資枠合わせて生涯1,800万円)を使い切っていないのであれば、まずNISA口座を優先して使うのが基本です。同じ投資成果であれば、非課税のNISA口座の方が税負担がない分、確実に有利だからです。

特定口座を使うのは、NISAの非課税枠を使い切った後、あるいは信用取引やNISA対象外の商品に投資する場合、といった位置づけになります。NISAの成長投資枠・つみたて投資枠の使い分けそのものについては新NISAの成長投資枠とつみたて投資枠——どう使い分けるかで解説していますので、あわせてご覧ください。

相続が発生したときの特定口座の扱い

あまり意識されない論点ですが、特定口座は相続時にも関わってきます。証券口座の名義人が亡くなった場合、その口座は凍結され、相続人が新たに証券口座を開設したうえで、株式や投資信託を移管する手続きが必要になります。このとき重要なのは、取得価額が相続発生時点の時価に引き継がれるという点です。

例えば、亡くなった方が100万円で購入した株式が、相続時点で300万円の価値になっていたとします。相続人がこの株式を引き継いだ場合、税務上の取得価額は300万円として扱われます。つまり、それまでの含み益200万円分については、相続税の対象にはなりますが、相続人がその後この株式を売却する際の譲渡所得税の対象からは外れる、ということです。逆に含み損を抱えていた株式を相続した場合は、その含み損は引き継がれず、相続人にとっては相続時点の時価が新たな取得価額になります。相続財産に証券口座がある場合は、こうした取得価額の切り替わりを踏まえたうえで、売却のタイミングを検討する価値があります。

特定口座の種類を変更したいとき

「源泉徴収なしで開設してしまったが、あとから源泉徴収ありに変更したい」というご相談も多くいただきます。結論として、変更自体は可能ですが、タイミングに制約があります。

証券会社にもよりますが、源泉徴収あり・なしの変更は、その年の最初の取引を行う前までであれば手続きできるのが一般的です。逆に言えば、その年に一度でも売買を行ってしまうと、同じ年内は変更できず、翌年まで待つ必要があります。年始に証券口座の設定を見直すのであれば、最初の取引の前に確認しておくのが安全です。

また、証券会社を乗り換える場合には注意点があります。特定口座内で保有している株式や投資信託を、含み損益を維持したまま別の証券会社へ移管できる制度(口座振替)がありますが、移管先の口座の源泉徴収区分は、必ずしも移管元と同じにはなりません。証券会社を変更する際は、移管先での口座区分の設定も忘れずに確認してください。

年間取引報告書の見方——確定申告で使う書類

確定申告をすると決めた場合、実際に手を動かすうえで中心になるのが「特定口座年間取引報告書」です。証券会社から毎年1月頃に交付され、多くの証券会社ではオンラインのマイページからもダウンロードできます。この書類には、その年の譲渡による利益・損失の合計額、配当等の額、源泉徴収された税額(所得税・住民税それぞれ)が、証券会社ごとにまとめて記載されています。

確定申告書を作成する際は、この年間取引報告書に記載された数字を、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」の該当欄に転記していく形になります。複数の証券会社に口座がある場合は、口座の数だけ年間取引報告書を用意し、それぞれの損益を合算して入力します。かつては年間取引報告書を確定申告書に添付する必要がありましたが、現在は添付・提示ともに不要になっており、手元に保管しておくだけで済みます(税務署から確認を求められる場合に備え、一定期間は保管しておくことをおすすめします)。

e-Taxを使えば、証券会社によっては年間取引報告書のデータを自動的に取り込める連携機能もあります。手入力による転記ミスを避けたい方は、利用している証券会社がこの連携に対応しているか確認してみるとよいでしょう。確定申告そのものの基礎や必要書類の全体像については確定申告の基礎:投資家が「必ず知っておくべき」税務の常識にまとめていますので、あわせて参照してください。会社員の方が使える他の節税手段も含めて確認したい場合は会社員が使える節税方法7選が参考になります。

実務上のチェックリスト

ここまでの内容を、実際に口座を選ぶ・見直す際に使えるチェックリストとして整理します。

  • 会社員・公務員で、投資の手間をかけたくない → 特定口座(源泉徴収あり)でよい
  • 配偶者・親の扶養に入っており、扶養から外れたくない → 特定口座(源泉徴収あり)を選び、投資利益を確定申告しない
  • 複数の証券会社で取引しており、一方が利益・一方が損失 → 源泉徴収ありのままでよいが、年末に損益通算のための確定申告を検討する
  • 今年、投資で損失が出ている → 繰越控除のための確定申告を検討する(源泉徴収ありでも可能)
  • 学生・専業主婦(主夫)で他に所得がほとんどない → 源泉徴収なしを選び、状況に応じて確定申告する方が有利な場合がある
  • 国民健康保険に加入しており保険料への影響が気になる → 確定申告による合計所得金額への影響を事前に試算する

まとめ——「あり」を基本にしつつ、年末に一度立ち止まる

特定口座の源泉徴収あり・なしは、多くの方にとって「あり」を選んでおけば大きな失敗はありません。証券会社が税金の計算と納税を代行してくれる仕組みは、手間とリスクを減らすという点で合理的です。

ただし「あり」を選んだからといって、確定申告の選択肢がなくなるわけではありません。複数口座での損益通算や、損失の繰越控除など、確定申告をすることで税負担を軽くできる場面は現実に存在します。一方で、確定申告によって合計所得金額が増え、扶養や国民健康保険の面で不利になることもあるため、機械的に「申告した方が得」とも言い切れません。

重要なのは、口座開設時に一度決めたら終わり、と考えないことです。特に投資で損失が出た年、複数の口座で取引をしている年は、年末から確定申告の時期にかけて、自分の場合はどちらが得なのかを一度立ち止まって確認する習慣を持ってください。その一手間が、数年単位で見ると小さくない差になります。

よくある質問

Q1. NISA口座しか使っていない場合も、源泉徴収あり・なしを選ぶ必要がありますか?

A. NISA口座には源泉徴収あり・なしという区分自体が存在しません。NISA口座内の利益は非課税のため、特定口座の設定を気にする必要はありません。特定口座を選ぶ必要が生じるのは、NISAの非課税枠を超えて投資する場合や、NISA対象外の商品に投資する場合です。

Q2. 源泉徴収なしを選んで確定申告を忘れた場合、どうなりますか?

A. 期限内申告を忘れると、無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。気づいた時点で早めに期限後申告をすることで、加算税が軽減される場合もあります。源泉徴収なしの口座で利益が出る見込みがある方は、確定申告の期限(原則翌年3月15日)を必ずカレンダーに入れておくことをおすすめします。


※本記事は特定銘柄・特定の申告方法を推奨するものではありません。税制の適用は個々の状況により異なるため、実際の確定申告や口座選択にあたっては、税理士または税務署にご確認ください。

個別のご相談・お仕事のご依頼について

「自分の場合はどうすればいいか」を個別に相談したい方は、MENTAで無料相談を受け付けています。講演・執筆・顧問・メディア取材などのご依頼は、お問い合わせフォームからご連絡ください。

著者プロフィール

岸 泰裕|早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了(金融工学MBA)。外資系金融機関を経て、上場企業で財務部長・財務責任者を歴任。480億円のシンジケートローン組成、R&IのA-格付取得を主導し、東証グロース市場への上場(2025年3月)に財務・IR担当として関与。現・イグニションポイント株式会社 財務担当マネージャー。明治大学リバティアカデミー講師。著書3冊。近著『日本株「配当×株主優待」で生活費消し込み投資』(ART NEXT)。詳しい経歴はプロフィールをご覧ください。

著者

岸 泰裕(きし やすひろ)

早稲田大学大学院金融工学MBA取得。元外資系バンカー。財務・IR・ガバナンス・ESG専門。著書3冊、累計調達額480億円、明治大学リバティアカデミー講師(2014年〜)。

▶ プロフィール詳細 ▶ 講演・取材のお問い合わせ ▶ 著書・実績一覧

最近の記事