資金調達に失敗する会社に共通するパターン——財務の現場で見えること

「資金調達 失敗」と検索する方の多くは、既に一度断られた経験があるか、これから融資や出資の交渉に臨む前に、あらかじめ落とし穴を知っておきたいと考えている方だと思います。断られた経験があると、自社の何が悪かったのか分からないまま、次の交渉に臨むことになりがちです。

結論から言えば、資金調達に失敗する会社の多くは、審査の直前になって何かを間違えたわけではありません。もっと手前の段階、つまり日々の数字の管理と、その数字を相手にどう説明するかという部分に、共通した弱さを抱えていることがほとんどです。この記事では、財務の実務でよく見られる失敗パターンを、数字に表れるものと表れないものに分けて整理します。

数字に表れる失敗パターン

まず分かりやすいのが、決算書や納税状況にそのまま表れてしまう問題です。税金や社会保険料の滞納がある場合、金融機関はそれを「事業の資金繰りが既に厳しい」というサインとして受け取ります。連続した赤字決算や、資産より負債が大きい債務超過の状態も同様に、審査の初期段階で大きなマイナス材料になります。

見落とされがちなのが、役員への貸付金や関係会社への資金流出です。会社の口座から個人や関連会社にお金が流れている場合、金融機関はその資金がどこまで事業のために使われているのか、疑いの目を向けます。数字の悪化そのものよりも、「なぜそうなったのか」を説明できない状態が、審査ではより重く見られます。

数字に表れない失敗パターン

もう一つの失敗パターンは、決算書の数字自体は悪くなくても、事業計画や資金使途の説明が具体性を欠いているケースです。「なんとなく成長しそうだから」「業界全体が伸びているから」という説明では、金融機関や投資家を動かすには不十分です。何にいくら使い、それによって何がどう変わるのかを、数字で語れるかどうかが問われます。

私が財務の現場で繰り返し感じてきたのは、決算書の数字が同じ水準の会社同士でも、この説明の具体性の差で、金融機関の印象が大きく変わるということです。以前の記事でも触れた通り、格付けの引き上げに携わった経験からも、財務数値そのものより、その数値の背景をどう伝えるかが、相手の判断を左右する場面を何度も見てきました。これは大企業の格付機関対応でも、中小企業の銀行融資でも、本質的には同じ構造です。

銀行融資一本に頼るリスク

もう一つ、失敗のパターンとしてよく見られるのが、資金調達の手段を銀行融資だけに絞ってしまうことです。銀行の審査基準に自社が合わなかった場合、代替手段を用意していないと、そこで資金調達そのものが行き詰まってしまいます。日本政策金融公庫の融資、補助金・助成金、クラウドファンディング、エクイティ(出資)など、事業のステージに応じて使える選択肢は複数あります。銀行融資が通らなかったことを「資金調達全体の失敗」と捉えてしまう前に、他の手段を検討する余地がないか、一度立ち止まって整理する価値があります。

失敗を防ぐために、今日からできること

これらの失敗パターンに共通しているのは、審査の直前に慌てて対処できるものがほとんどないという点です。だからこそ、日頃からの準備が効いてきます。

一つは、月次で簡単な資金繰り表を作り、数か月先の資金の過不足を把握しておくことです。資金が足りなくなってから調達先を探すのと、余裕を持って動き出すのとでは、金融機関側の受け止め方もまったく違います。もう一つは、決算のタイミングだけでなく、普段から取引金融機関と接点を持ち、事業の状況を定期的に共有しておくことです。急に資金が必要になったときにいきなり相談するより、日頃から事業の進捗を知ってもらっている方が、話が早く進みます。

いずれも特別なことではありませんが、実際にできている会社は、規模の大小を問わず多くありません。だからこそ、この地道な積み重ねが差になります。

まとめ——失敗は、審査の直前ではなく手前で始まっている

資金調達の失敗は、面談当日の受け答えや提出書類の不備といった、直前の出来事だけが原因になることは、実はそれほど多くありません。多くの場合、日々の資金繰り管理の甘さや、事業の状況を数字で説明する習慣が身についていないことが、審査の場で一気に表面化しているだけです。逆に言えば、決算の数字を整えることと同じくらい、その数字の背景を具体的に説明できる体制を日頃から作っておくことが、資金調達の成否を分ける最も地道な対策だと言えます。

著者

岸 泰裕(きし やすひろ)

早稲田大学大学院金融工学MBA取得。元外資系バンカー。財務・IR・ガバナンス・ESG専門。著書3冊、累計調達額480億円、明治大学リバティアカデミー講師(2014年〜)。

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