「有事の株安」にどう向き合うか。暴落局面での判断基準とプロの視点

岸泰裕です。

中東の地政学リスクが爆発した瞬間、世界の株式市場は一斉にリスクオフ(回避)の姿勢に転じました。
日経平均もS&P500も、真っ赤な陰線をつけて急降下しています。
あなたのSNSのタイムラインも、「含み損がヤバい」「もうNISAやめたい」という動揺の声で溢れかえっていることでしょう。

しかし、投資の世界における真理をお教えしましょう。
「素人が恐怖で投げ売りしている時こそ、プロが舌舐めずりをして買い漁る時間」なのです。

今回は、暴落相場でパニックに陥る投資家心理と、有事を利益に変える冷静な投資家の思考回路について語ります。

「有事の株安」にどう向き合うか。暴落局面での判断基準とプロの視点

 

1. 「長期投資」という言葉の信用のなさ

NISAブームに乗って投資を始めた人々の多くは、「右肩上がりの相場」しか経験したことのない温室育ちです。
彼らは口を揃えて「私は20年の長期投資だから、短期の下げは気にしない」と言っていました。

含み損が暴く「本当のリスク許容度」

しかし、いざ有事が勃発し、自分の資産残高が数日で10%、20%と溶けていくのを目の当たりにすると、その決意は簡単に崩れ去ります。
「これ以上損をしたくない」「とりあえず現金化して、底値で入り直そう」
そうやって恐怖に負けて「売るボタン」を押した瞬間、彼らの長期投資は終わり、ただの高値掴み・安値売りのギャンブルに成り下がります。

長期投資とは、言葉で言うほど生易しいものではありません。
世界恐慌、テロ、戦争、パンデミック。
これらの「ブラックスワン(予期せぬ暴落)」を何度も胃を痛めながら乗り越えた者だけが、最後に複利の果実を手にできるのです。

2. 「血が流れている時に買え」

18世紀の巨大財閥、ロスチャイルド家の当主はこう言いました。
「通りに血が流れている時に買え。たとえそれが自分の血であっても」

有事の暴落時、市場は「合理的」ではありません。
恐怖が恐怖を呼び、本来の企業価値(ファンダメンタルズ)に関係なく、すべての銘柄がパニック的に叩き売られます。
優良企業の株価が、バーゲンセールのような価格で放置されるのです。

プロは「何を」買っているのか

有事の際、プロの投資家は決して焦りません。
彼らは事前に十分な現金(キャッシュ)を確保しており、VIX指数(恐怖指数)が跳ね上がった瞬間を待っていました。

彼らが狙うのは、パニックで売られすぎたテクノロジー株の優良銘柄や、中東有事で確実に利益が跳ね上がるエネルギーセクター(石油メジャーや商社)、あるいは防衛関連銘柄です。
素人が「これ以上下がるのが怖い」と手放した株券を、プロは「こんな安値で譲ってくれてありがとう」とニコニコしながら拾い集めているのです。

3. 暴落時に「弾(現金)」がない投資家の悲劇

このバーゲンハントに参加するための絶対条件があります。
それは、「手元に余剰なキャッシュ(現金)があること」です。

「現金はゴミだ」「インフレで価値が目減りするから全額フルインベストメントしろ」と煽られ、手元の資金をすべて株に変えてしまった人は、この暴落相場で何もできません。
ただ指をくわえて自分の資産が減っていくのを見ているだけの状態に陥ってしまいます。

キャッシュを持たない投資家は、チャンスを掴めません。
企業財務の世界でも同じです。不況時(暴落時)に現金を豊富に持っている企業だけが、ライバル企業を安値で買収(M&A)してシェアを拡大できるのです。

結論:相場のノイズを消し、バーゲン会場へ向かえ

テレビのニュースが「株価の暴落」を煽り立てている時こそ、絶好の買い場です。
恐怖に支配された大衆と同じ行動をとって、勝てるわけがありません。

もしあなたがNISAでインデックスを積み立てているなら、絶対に設定を解除してはいけません。むしろ、安く多く買える「ボーナスタイム」だと喜ぶべきです。
そしてもし手元に余剰資金があるなら、今こそその弾を撃ち込む時です。

投資の神様ウォーレン・バフェットの言葉を胸に刻んでください。
「他人が貪欲な時に恐怖を抱き、他人が恐怖を抱いている時に貪欲になれ」


参考・公式資料

著者プロフィール

岸 泰裕|早稲田大学大学院MBA(金融工学)。外資系金融機関を経て、東証上場企業の財務部長・財務責任者を歴任。480億円のシンジケートローン組成、R&IのA-格付取得を主導し、東証グロース市場への上場(2025年3月)に財務・IR担当として関与。現イグニションポイント株式会社 財務担当マネージャー。明治大学リバティアカデミー講師。著書3冊。近著『日本株「配当×株主優待」で生活費消し込み投資』(ART NEXT)。

著者

岸 泰裕(きし やすひろ)

早稲田大学大学院金融工学MBA取得。元外資系バンカー。財務・IR・ガバナンス・ESG専門。著書3冊、累計調達額480億円、明治大学リバティアカデミー講師(2014年〜)。

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