「投資」と聞いて、最初に頭に浮かぶのが「怖い」「損をしそう」という感覚だとしたら——その感覚は、まったく正しいものです。私はこれまで外資系金融機関と上場企業の財務の現場で多くの数字と向き合い、明治大学リバティアカデミーでも投資をお伝えしてきましたが、セミナーに来られる方の大半が、最初は同じ言葉を口にします。「お金を増やしたい。でも、減るのが怖い」。この章では、その「怖さ」の正体を一つずつ分解していきます。結論から申し上げます。投資は、正しいやり方を知れば、怖いものではありません。怖いのは「投資」そのものではなく、「やり方を知らないまま、なんとなく手を出すこと」なのです。
「投資は怖い」というあなたの感覚は、間違っていません
まず、はっきりお伝えしておきたいことがあります。「投資が怖い」と感じるあなたの感覚は、決しておかしなものではありません。むしろ、お金を大切にしている真っ当な感覚です。私も最初に金融の世界に足を踏み入れたとき、他人の何十億というお金が一瞬で動く現場を見て、率直に「恐ろしい」と思いました。お金が減るかもしれない、という不安は、人間として自然な防衛本能です。
問題は、その「怖い」という感覚を、そのまま放置してしまうことにあります。怖いから何も学ばない、学ばないからもっと分からなくなる、分からないからますます怖くなる——この悪循環に入ってしまうと、一生「投資=怖いもの」のままです。重要なのは、怖さを消そうとすることではなく、怖さの中身を「正体の分かるもの」に変えていくことです。幽霊が怖いのは、正体が分からないからです。正体さえ分かれば、過度に恐れる必要はなくなります。投資もまったく同じです。
「投資」と「投機」はまったくの別物です
多くの方が「投資」と聞いて思い浮かべているのは、実は「投機(とうき)」——つまりギャンブルに近いものです。ここを区別できると、怖さの半分は消えます。端的に言えば、投機は「短い時間で大きく賭ける」こと、投資は「長い時間をかけて、価値が育つものに少しずつお金を置いておく」ことです。同じ「お金を出す」行為でも、中身はまったく違います。
私がセミナーでよく使う例えがあります。投機は、競馬の単勝馬券のようなものです。当たれば大きい、外れればゼロ。一方の投資は、コンビニのオーナーになるようなものです。毎日コツコツと商品が売れて、少しずつ利益が積み上がっていく。劇的な一発はないかわりに、店がつぶれない限り、利益は着実に増えていきます。株式投資の本質は、ギャンブルではなく、この「お店のオーナーになること」に近いのです。トヨタの株を買うということは、世界中で車を売り続けるトヨタという会社の、ほんの小さなオーナーの一人になる、ということなのです。
「株でお金を失った」という話の多くは、実は投資ではなく投機で失敗した話です。値上がりしそうな銘柄を聞きかじって、短期間で売り買いして、結局タイミングを外して損をする。これは投資の失敗ではなく、ギャンブルの失敗です。あなたがこれから始めるのは、そういうものではありません。
念のため申し添えますが、私は「投機が悪で、投資が善だ」と言いたいわけではありません。プロの世界には、短期売買を専門にする人もいますし、それで結果を出している人もいます。ただ、それは一日中相場に張りつき、専用の道具と豊富な情報、そして失っても問題のない資金を持った、いわば専業の人たちの世界です。仕事や家事や育児で忙しい私たちが、片手間で同じ土俵に上がれば、勝てないのは当然です。私が外資系金融の現場で痛感したのも、まさにこの「土俵の違い」でした。だからこそ、私たちは「投機の土俵」には乗らず、「投資の土俵」で勝負します。どこで戦うかを間違えないこと。これが、初心者にとって最初の、そして最大の勝因になります。
なぜ多くの人が「株で損をした」と言うのか
身の回りに「株で損をした」という人が一人はいるはずです。その人たちの話をよく聞いてみると、ほとんどが同じパターンに当てはまります。私が現場で見てきた「お金を失う人」の行動には、驚くほど共通点があるのです。
一つ目は、「短期間で大きく儲けようとした」こと。半年で資産を倍にしよう、といった発想です。二つ目は、「一つの銘柄に全財産を集中させた」こと。「この会社は絶対に伸びる」と信じ込んで、一点賭けをしてしまう。三つ目は、「下がったときに怖くなって売ってしまった」こと。これが最も多く、そして最ももったいない失敗です。これら三つは、いずれも「投資」ではなく「投機」の行動です。逆に言えば、この三つさえ避ければ、大きく失敗する確率は劇的に下がります。怖さの正体が、少しずつ見えてきたのではないでしょうか。
とりわけ三つ目の「下がったときに売ってしまう」が、なぜこれほど多くの人を襲うのかは、知っておく価値があります。人間の脳は、同じ金額でも「得をする喜び」より「損をする痛み」を二倍以上強く感じるようにできていると言われます。つまり、資産が一割減っただけでも、私たちは実際以上の恐怖を感じ、「これ以上減る前に、早く逃げなければ」と判断してしまうのです。これは意志が弱いからではありません。人間として、ごく正常な反応です。私もセミナーで「冷静に持ち続けましょう」とお伝えしますが、いざ自分の資産が目の前で減れば、誰でも平静ではいられません。だからこそ大切なのは、精神力で耐えようとすることではなく、そもそも感情で売買しなくて済む「仕組み」を、あらかじめ作っておくことなのです。
お金を増やす人がやっている、たった一つのこと
では、反対に「お金を着実に増やしている人」は何をしているのでしょうか。複雑なテクニックを駆使していると思われるかもしれませんが、実態はその逆です。増やす人ほど、やっていることはシンプルです。端的に言えば、「価値のあるものに、分散して、長く、淡々と積み立てている」。これだけです。
私は外資系金融機関でも上場企業の財務でも、いわゆる「プロ」と呼ばれる人たちを数多く見てきました。意外に聞こえるかもしれませんが、短期の売買で安定して勝ち続けられるプロは、ほとんどいません。プロでも相場のタイミングを当て続けるのは至難の業なのです。だからこそ、初心者の方にとっての最適解は、プロの真似をして相場を読もうとすることではなく、「世界経済全体の成長に、ゆっくり乗っていく」ことになります。これは派手さこそありませんが、過去の長い歴史が、その有効性を証明してきた王道です。
もう少し具体的にお話しします。世界経済は、二度の世界大戦や、幾度もの恐慌、石油危機、リーマンショック、そして感染症の世界的流行といった数えきれない危機をくぐり抜けながらも、長期では一貫して成長を続けてきました。世界の人口は増え、技術は進歩し、企業は新しい商品やサービスを生み出して利益を積み上げてきたからです。世界中の株式をひとまとめにした平均的な値動きを示す指標は、短期では激しく上下を繰り返しながらも、数十年という単位で見れば、力強い右肩上がりを描いてきました。お金を着実に増やしている人は、どの会社が当たるかを天才的に当てているわけではありません。ただ、この「人類全体が前へ進み続ける」という大きな流れに、静かに乗っているだけなのです。そう考えると、難しい銘柄選びは、必ずしも必要ないことが分かります。
「卵を一つのカゴに盛るな」——分散の本当の意味
投資の世界に、古くから伝わる有名な言葉があります。「卵を一つのカゴに盛るな」。すべての卵を一つのカゴに入れておくと、そのカゴを落としたときに全部割れてしまう。いくつかのカゴに分けておけば、一つを落としても残りは無事だ、という教えです。これが「分散(ぶんさん)」——つまり、投資先を一つに集中させず、複数に散らしておくという考え方です。
具体的に考えてみましょう。もしあなたが、ある一社の株だけを持っていたとします。その会社が不祥事を起こしたり、業績が急に悪化したりすれば、あなたの資産も一緒に大きく沈みます。これは怖いことです。しかし、トヨタのような自動車会社、ユニクロを展開するファーストリテイリングのような小売の会社、そして世界中のさまざまな会社に少しずつ分けて投資していたらどうでしょう。どこか一社がつまずいても、他の会社が支えてくれます。分散とは、いわば「怖さを薄める技術」なのです。そして今は、世界中の何千という会社にまとめて少額から投資できる便利な仕組み——投資信託やインデックスファンドと呼ばれるもの——が存在します。これについては、第4節以降で詳しくお話しします。
さらにお伝えしておきたいのが、分散には「時間の分散」という、もう一つの大切な考え方があることです。投資先を散らすだけでなく、買う時期も散らす、ということです。たとえば手元の三十万円を一度にまとめて投じると、その日一日の値段にすべてが左右されてしまいます。たまたま高い日に買ってしまえば、それだけで不利なスタートになります。しかし、毎月一万円ずつ三十か月に分けて買えば、高い月も安い月も含めた、平均的な値段で買うことができます。投資先を散らす「資産の分散」と、買う時期を散らす「時間の分散」。この二つを組み合わせるだけで、あなたの投資は驚くほど安定し、怖さはさらに薄れていきます。難しい知識は要りません。ただ「一点に賭けない、一度に賭けない」。煎じ詰めれば、それだけのことなのです。
「いつ買うか」を当てようとしないこと
投資を始めようとする方が必ずぶつかる悩みが、「今は高いんじゃないか」「もっと下がってから買ったほうがいいんじゃないか」という、買うタイミングの問題です。結論を先に申し上げます。その「最適なタイミング」を当てようとすること自体が、最も危険な行為です。
なぜなら、相場の天井や底を正確に当てることは、長年市場を見てきたプロでも不可能だからです。「もっと下がってから」と待っているうちに、相場はどんどん上がっていき、結局買えないまま機会を逃す。これは本当によくある話です。では、どうすればよいのか。答えは「タイミングを当てるのをやめて、毎月決まった額を、決まった日に、淡々と買い続ける」ことです。これを専門的には「ドルコスト平均法」と呼びますが、難しく考える必要はありません。要するに、高いときも安いときも機械的に買い続けることで、買う値段を平均化してしまう方法です。価格が高いときは少なく、安いときは多く買えるため、「高値づかみ」という最も避けたい失敗を、仕組みで防いでくれます。
イメージしやすいように、身近な例で考えてみましょう。毎月一万円分のりんごを買うと決めたとします。りんごが一個百円の月は百個買えますが、値上がりして一個二百円の月は五十個しか買えません。逆に、暴落して一個五十円になった月は二百個も買えます。値段が下がった月ほどたくさん仕込めるので、長い目でならしてみると、平均の購入単価は自然と低く抑えられていきます。これが、タイミングを当てにいかずに勝つ、という発想の正体です。相場を読む天才である必要は、まったくありません。
この方法のもう一つの大きな利点は、「考えなくてよくなる」ことです。多くの証券会社では、毎月決まった日に決まった額を自動で買い付ける設定ができます。一度設定してしまえば、あとは相場のニュースに一喜一憂する必要も、「今日は買うべきか」と毎回悩む必要もありません。私がセミナーでよく申し上げるのは、「投資で最もやってはいけないのは、相場を見すぎて手を動かしすぎることです」ということです。日々の値動きを気にして頻繁に売り買いするほど、判断ミスの機会は増え、手数料もかさみます。自動積立は、その最大の敵である「自分自身の感情」を、仕組みの力でそっと遠ざけてくれます。忙しい人ほど、この「ほったらかし」が向いているのです。
株価が下がったときこそ、差が出る
投資をしていれば、必ず「相場が大きく下がる」局面がやってきます。これは避けられません。リーマンショックも、コロナショックもそうでした。重要なのは、その下落のときに、あなたがどう振る舞うかです。ここで、お金を失う人と増やす人が、はっきりと分かれます。
お金を失う人は、下がった瞬間に怖くなって、すべてを売ってしまいます。「これ以上減るのは耐えられない」と。しかし、これは「安いときに手放す」という、最もやってはいけない行為です。一方、お金を増やす人は、下落をむしろ「優良な会社を安く買えるバーゲンセール」だと捉えます。私も金融の現場で何度も相場の急落を経験しましたが、冷静な投資家ほど、パニックのときに静かに買い増していました。とはいえ、これは強靭な精神力が必要だという話ではありません。先ほどの「毎月淡々と積み立てる」仕組みを作っておけば、下落時にも自動的に「安く買う」を実行できます。感情ではなく、仕組みで乗り越える。これが下落と向き合う唯一の現実的な方法です。
記憶に新しい例で言えば、二〇二〇年春のコロナショックです。感染症の世界的な広がりを受けて、世界中の株価が短期間で三割ほど急落しました。連日の暗いニュースに恐怖を感じ、多くの人が「もう終わりだ」と資産を投げ売りしました。ところが、その後の一年あまりで、相場は急落前の水準を超えるところまで回復していったのです。あのとき慌てて売った人は損を確定させ、一方で淡々と積み立てを続けた人や、むしろ買い増した人は、その後の回復の恩恵をしっかり受け取りました。同じ下落を経験しても、行動一つで結果は正反対になります。覚えておいていただきたいのは、優良な資産に分散して長く持っている限り、下落は「終わり」ではなく「通過点」にすぎない、ということです。歴史上、世界経済はあらゆる暴落から立ち直ってきました。
「元本割れ」が怖い人へ——リスクとは「危険」ではなく「ブレ」
「元本割れ(がんぽんわれ)」——つまり、投じたお金そのものが減ってしまうこと。これを怖いと感じる方は非常に多いです。その気持ちはよく分かります。ただ、ここで一つ、言葉の誤解を解いておきたいのです。投資の世界で使う「リスク」という言葉は、日常で使う「危険」という意味とは少し違います。
投資における「リスク」とは、正確には「価格の振れ幅(ブレ)の大きさ」を指します。値段が上にも下にも大きく動くものを「リスクが高い」、あまり動かないものを「リスクが低い」と表現するのです。つまりリスクが高いとは「危ない」という意味ではなく、「上にも下にもよく動く」という意味なのです。ここが腑に落ちると、見え方が変わります。短期間では上下に大きくブレても、世界経済が長期的に成長を続ける限り、長い時間をかければそのブレは平らにならされ、右肩上がりに収束していく傾向があります。だからこそ、投資の怖さを減らす最大の武器は「時間」なのです。短く区切るほど投資はギャンブルに近づき、長く構えるほど安定に近づきます。
少し過去を振り返ってみましょう。世界の主要な株式に分散して投資した場合、一年だけを切り取れば、年によっては三割上がることも、三割下がることもありました。振れ幅は決して小さくありません。ところが、これを十五年、二十年という長さで区切って平均すると、どの時期から始めても、おおむね年率数パーセントのプラスに収束してきたことが知られています。一年というレンズで見れば荒々しい波も、二十年というレンズで眺めれば、なだらかな上り坂に見えてくるのです。短期の値動きにいちいちおびえる必要がないのは、このためです。あなたが本当に向き合うべきなのは、明日の株価ではなく、二十年後のあなた自身の資産なのです。
身近な企業で考える——「株を持つ」とはどういうことか
株という言葉が無機質で怖く感じるなら、もっと身近に置き換えてみましょう。あなたが毎日使う商品やサービスを思い浮かべてください。マクドナルドでハンバーガーを食べ、ユニクロで服を買い、トヨタの車に乗る。こうした会社の株を持つということは、その会社が世界中で稼いだ利益の一部を、オーナーとして分けてもらえる立場になる、ということです。
あなたがマクドナルドで支払った数百円は、めぐりめぐって、その会社の株を持つ世界中の投資家の利益になります。投資をしていない人は「消費するだけの側」にずっと留まりますが、投資を始めた瞬間から、あなたは「消費される側=利益を受け取る側」にも回れるのです。これは、お金持ちだけの特権ではありません。今は数百円、数千円といった少額から、こうした世界的な企業のオーナーの一人になれる時代です。そう考えると、株は遠い世界の怖いものではなく、あなたの日常とつながった、ごく身近なものに見えてこないでしょうか。
「少額から始める」が、最強の恐怖対策です
どれだけ理屈で「怖くない」と理解しても、最後の一歩がどうしても踏み出せない——これも、とても自然なことです。頭で分かることと、実際にお金を投じることの間には、大きな壁があります。私がこの壁を越えるために最もおすすめしているのは、拍子抜けするほど単純な方法です。「失っても困らない、ごく少額から始める」こと。たったこれだけです。
たとえば、毎月千円。あるいは三千円でも構いません。これくらいの金額なら、たとえ一時的に半分に減っても、生活には何の影響もありません。けれども、実際に自分のお金で投資を始めてみると、見える景色が一変します。値段が上がったり下がったりする感覚、世界のニュースが自分のお金とつながっている感覚——これらは、本を百冊読んでも得られない、実地の学びです。重要なのは、最初から大きな金額で完璧にやろうとしないことです。少額で始めて、慣れながら、自分のペースで増やしていけばよいのです。投資の恐怖は、知識と、ほんの少しの経験によって、確実に小さくなっていきます。
そしてもう一つ、少額から始めることには、見落とされがちな大きな効能があります。それは「投資について、自然と学ぶようになる」ことです。自分のお金が、たとえ千円でも市場に置かれていると、人は不思議とニュースの見え方が変わります。円安や金利の動き、海外の出来事が、急に「自分ごと」として頭に入ってくるのです。これは、いくら本を読んでも得られない、当事者だけの学びです。私のセミナーでも、少額でまず一歩を踏み出した方ほど、その後の理解の伸びが速い傾向があります。完璧に理解してから始めようとすると、たいていの人は一生始められません。小さく始めながら、理解を深めていく。遠回りに見えて、これが最も確実な道なのです。
「投資をしないリスク」のほうが、実は大きい
ここまで「投資の怖さ」を解きほぐしてきましたが、最後に、あえて反対側からの視点をお伝えします。多くの方は「投資をすると損をするかもしれない」というリスクばかりを見ています。しかし、本当に向き合うべきなのは、「投資をしないことのリスク」のほうかもしれません。
第1節でお話ししたとおり、物価が上がっていく世の中では、現金をただ預金口座に置いておくだけで、その価値は静かに目減りしていきます。銀行に預けても、今の金利ではほとんど増えません。つまり「何もしない」という選択もまた、「お金の価値が減るリスクを取っている」状態なのです。投資をしない安全な道など、本当はどこにもありません。私たちは結局、「お金が減るかもしれない投資のリスク」と「確実にお金の価値が減っていく預金のリスク」の、どちらを選ぶかという話をしているのです。こう整理すると、「怖いから何もしない」が、必ずしも安全な選択ではないことが見えてきます。
最初の一歩を、軽くしてくれる制度がある
「それでも、いきなり投資はハードルが高い」。そう感じる方の背中を押すために、国が用意してくれた制度があります。それが「NISA(ニーサ)」です。これは、投資で得た利益にかかる税金が、一定の範囲内でかからなくなる、という非常にお得な仕組みです。通常、投資で出た利益にはおよそ2割の税金がかかりますが、NISAの中で投資をすれば、その税金がゼロになります。初心者の方が「怖さ」を減らしながら投資を始めるうえで、これ以上ない味方です。
このNISAをどう使えばよいのか、何を選べばよいのかについては、次の第4節「NISAの基本」でじっくり解説します。ここでは、「初心者がまず使うべき、強力な味方がある」ということだけ覚えておいてください。怖さを乗り越える準備は、もう半分以上できています。
まとめ——怖いのは「投資」ではなく「無知」です
この節でお伝えしたかったことは、一つに集約されます。投資そのものは怖くない。怖いのは、やり方を知らないまま、ギャンブルのように手を出すことだ、ということです。短期で大きく賭けず、一点に集中させず、下落で慌てて売らない。価値あるものに、分散して、長く、淡々と積み立てる。そして、失っても困らない少額から始める。この原則さえ守れば、投資は決してあなたを破滅させるものではなく、未来のあなたを静かに助けてくれる、心強い味方になります。
幽霊の正体が枯れ尾花だったように、投資の怖さの正体も、突き詰めれば「知らないこと」でした。あなたはもう、その正体を知り始めています。次の節からは、いよいよ「具体的に、どう始めるか」という実践に入っていきます。怖さを手放して、一緒に最初の一歩を踏み出していきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 投資は結局、ギャンブルと同じではないですか?
いいえ、本質的に別物です。ギャンブル(投機)は短い時間で勝ち負けを決める「賭け」ですが、投資は価値が育つ会社や経済全体に長くお金を置いておく行為です。コンビニのオーナーが日々の売上から少しずつ利益を得ていくのと同じで、長期・分散・積立を守れば、ギャンブルとはまったく異なる、再現性のある資産形成になります。
Q. 元本割れが怖いのですが、絶対に損をしない方法はありますか?
「絶対に損をしない」と言い切る投資は存在せず、もしそう謳う勧誘があれば、それは詐欺を疑うべきです。ただし、損をする確率を大きく下げる方法はあります。世界中に分散し、長期間にわたって、毎月一定額を積み立てることです。短期では上下にブレても、長く続けるほどそのブレはならされ、リスク(=価格の振れ幅)は小さくなっていきます。
Q. いくらから始めれば、怖くないですか?
「失っても生活に困らない金額」から始めるのが鉄則です。毎月千円や三千円でも十分です。少額であれば、たとえ値下がりしても精神的なダメージは小さく、その間に値動きの感覚や仕組みを体で学べます。慣れてきたら、自分のペースで少しずつ増やしていけば問題ありません。最初から大きく、完璧にやろうとしないことが、長く続けるコツです。
Q. 株価が暴落したら、どうすればいいですか?
原則は「慌てて売らない」ことです。暴落は、優良な会社を安く買える機会でもあります。毎月一定額を積み立てる仕組みにしておけば、暴落時にも自動的に「安く多く買う」が実行され、感情に振り回されずに済みます。生活費とは別の、当面使う予定のないお金で投資をしておくことが、暴落を冷静にやり過ごすための一番の準備になります。
著者
岸 泰裕(きし やすひろ)
早稲田大学大学院金融工学MBA取得。元外資系バンカー。財務・IR・ガバナンス・ESG専門。著書3冊、累計調達額480億円、明治大学リバティアカデミー講師(2014年〜)。