新NISAを始めようと決意した瞬間から、多くの人が直面するのが「どこの証券会社を使えばいいか」という問いです。金融機関は銀行から証券会社まで数多く存在し、テレビCMでもさまざまなサービスが宣伝されています。
この記事では2026年時点での情報をもとに、新NISA口座を開設するための最適な証券会社を外資系金融機関出身の視点から整理します。結論を先に言えば「SBI証券か楽天証券の二択」が現在の最良解です。その理由と、各社の詳細な比較を説明します。
NISA口座選びで最重要な3つの基準
証券会社を選ぶ際に確認すべき基準は3つです。
基準1:取扱ファンドの種類と品質
新NISAのつみたて投資枠では「金融庁認定のインデックスファンド」しか購入できません。ただし取り扱う銘柄数に差があります。eMAXIS SlimシリーズやSBI・Vシリーズなど「業界最低水準の信託報酬を誇るファンド」の取り扱いが充実しているかどうかが重要です。
基準2:ポイント還元・クレジットカード積立
2024年以降、クレジットカードで積立投資をするとポイントが付与されるサービスが主要ネット証券で普及しています。同じ積立をするなら、ポイントが付く方が実質的に有利です。
基準3:使いやすさ・サポート体制
特に投資初心者にとって「アプリの使いやすさ」「サポートの充実度」は長期継続の上で重要です。
SBI証券——圧倒的な総合力
国内最大の証券口座数を誇るSBI証券は、2026年時点でも「ネット証券の総合トップ」の地位を維持しています。
SBI証券の強み
取扱ファンド数が最多水準で、eMAXIS Slimシリーズ・SBI・Vシリーズなど低コストファンドが充実しています。クレジットカード積立には三井住友カード(Oliveカード)が利用可能で、カード種別に応じて0.5〜5%のVポイントが付与されます(最大月10万円まで)。外国株・国内株の取引手数料が業界最低水準(米国株は取引手数料実質無料)。口座数が国内最大であり、システム安定性も高い。
SBI証券の注意点
アプリのUI(操作画面)が複雑で、初心者には少し使いにくいという声があります。特に「新NISA専用の積立設定画面」を探しにくいという点は改善の余地があります。ただし慣れれば問題ありません。
SBI証券でのNISA積立の具体的な設定方法
SBI証券でNISAを使う場合:まず「SBI証券 口座開設」で申し込み(NISA口座は同時申請)→ 本人確認書類の提出 → 口座開設完了 → 「積立投資枠」でeMAXIS Slimオルカンを選択 → 毎月積立金額を設定 → 三井住友カード積立に切り替えるとポイントが付与される。
楽天証券——楽天経済圏ユーザーに最適
楽天グループのサービスをよく使う方(楽天カード・楽天市場・楽天モバイル等)には楽天証券が最適です。楽天ポイントエコシステムの中に証券が組み込まれているため、相乗効果が生まれます。
楽天証券の強み
楽天カードで積立投資をすると楽天ポイントが付与されます(通常カードで月5万円まで0.5〜1%、楽天プレミアムカードで月10万円まで最大1%)。楽天市場の購入でのポイントも投資信託の購入に使えます。アプリ・PCサイトともにUI(操作画面)がシンプルで初心者に使いやすいと評価されています。楽天銀行との連携(マネーブリッジ)で普通預金金利が0.1%(通常の100倍)になるメリットも。
楽天証券の注意点
2022年に「楽天カード積立のポイント付与率引き下げ」があり、楽天ユーザーの不満を集めました。その後部分的に改善されましたが、ポイント還元率の変動リスクは念頭に置く必要があります。取扱ファンド数はSBI証券より若干少ない(ただし主要な低コストファンドは全て揃っています)。
マネックス証券——米国株投資に特化したい方へ
SBI・楽天以外では、マネックス証券が一定の存在感を持ちます。
マネックスの特徴は「米国株の取引ツールの充実」です。銘柄スクリーニング(条件に合う銘柄を検索する機能)が豊富で、個別株投資に力を入れたい方には魅力があります。
NISAのつみたて投資枠でのインデックスファンド積立については、SBI・楽天と比較して大きな差はありません。マネックスカード積立(最大1.1%還元)は還元率が高い水準です。
ただし、口座数・取扱商品数・システム安定性ではSBI・楽天が勝ります。「米国個別株に力を入れたい」という明確な目的がある方以外は、SBI・楽天から選ぶことをお勧めします。
銀行・窓口での口座開設は絶対に避けるべき理由
「近くの銀行で口座を開きたい」「担当者がいた方が安心」という方も多い。しかし銀行窓口での投資信託購入には重大な問題があります。
第一に「購入手数料(販売手数料)がかかる場合がある」こと。ネット証券ではほぼ全てのインデックスファンドが購入時手数料0円(ノーロード)ですが、銀行経由では1〜3%の販売手数料が発生することがあります。100万円の投資で1〜3万円が即座にコストになります。
第二に「高コスト・高手数料の商品を勧められるリスク」。銀行の窓口担当者には「販売手数料が高い商品を売る」インセンティブがあります。「お客様にぴったりの商品」として紹介されるものが、実際には「銀行が最も儲かる商品」であることは珍しくありません。
第三に「ラインナップが限られる」。ネット証券は数千本のファンドを取り扱いますが、銀行窓口は数十〜数百本程度が多く、低コストのインデックスファンドが揃っていないことがほとんどです。
「担当者がいる安心感」はお金で買っている部分があります。長期の資産形成では、その「安心料」がリターンを大幅に圧迫します。
「複数の証券会社に口座を持つ」必要はあるか
「SBIと楽天、両方開いておいた方がいいですか?」という質問もよく受けます。
基本的には1社で十分です。NISA口座は1人1口座しか持てません(証券会社を毎年変更はできますが、手続きが煩雑)。課税口座を複数持つことは可能ですが、管理コスト(確定申告での損益通算等)が増えます。
「メインをSBI、サブを楽天」という形で2口座を使い分ける投資家もいます。ただし初心者の段階では1社に集中する方が管理が楽で、心理的にも余計な情報に惑わされにくい。まず1社で使い方を覚えてから、必要性を感じたら2社目を検討してください。
2026年時点での「最強」証券会社の結論
2026年現在の状況でお勧めの選択を整理します。
楽天カードを持っている・楽天市場をよく使う → 楽天証券
楽天経済圏に乗っている方は楽天証券が相乗効果を生みます。ポイントの活用・楽天銀行との連携・UI の使いやすさが強みです。
三井住友カードを持っている・Vポイントを使いたい → SBI証券
三井住友カード(NLカードで0.5%、Oliveゴールドで1%、プラチナプリファードで5%)との組み合わせで高還元率を実現できます。取扱ファンド数・システム安定性ではSBI証券が最高水準です。
どちらでもない・初めて投資する → SBI証券
特別な事情がない場合、口座数・取扱商品・安定性でトップのSBI証券が最も無難な選択です。三井住友カード(NLカード)も年会費無料で0.5%還元があるため、新規に取得する価値があります。
まとめ——証券会社選びに時間をかけすぎないこと
最後に重要なことを言います。証券会社選びに悩みすぎることが「投資開始を遅らせる」最大の罠です。
SBIでも楽天でも、どちらを選んでも長期の資産形成に支障はありません。「完璧な証券会社を探している間に、積立できたはずの数ヶ月分の資産機会を失う」方が損失は大きい。
「SBIか楽天か迷ったらSBI」——これが私の最終的な答えです。今日中に口座開設を始めてください。
SBI証券と楽天証券の詳細比較——2026年最新版
「どちらを選ぶか」の判断に役立つよう、主要項目を詳細に比較します。
クレジットカード積立の還元率比較
SBI証券のクレカ積立は三井住友カードシリーズ(Vポイント付与)。2024年以降の条件では、三井住友カードNL(年会費無料)で月5万円まで0.5%還元、月5〜10万円は0%になっていました。三井住友カードゴールドNL(年会費5,500円・条件付き無料)で月10万円まで1%還元。三井住友カードプラチナプリファード(年会費3.3万円)で月10万円まで5%還元という構造です(2026年時点・改定の可能性あり)。
楽天証券のクレカ積立は楽天カード(楽天ポイント付与)。通常の楽天カードで月5万円まで0.5〜1%還元、楽天ゴールドカードで1%。楽天プレミアムカード(年会費1.1万円)で月10万円まで1%還元。
高還元率を求めるならSBI×プラチナプリファードの組み合わせが5%と圧倒的ですが、年会費3.3万円(ただし毎年100万円決済で条件付き無料になるプログラムあり)がかかります。年会費なしで始めたい方は、SBI×三井住友カードNL(0.5%)か楽天×楽天カード(0.5〜1%)が同程度です。
取扱ファンド数(NISA対象)
SBI証券:つみたて投資枠240〜280本、成長投資枠3,000本以上(2025年末時点概算)
楽天証券:つみたて投資枠230〜270本、成長投資枠2,000本以上(同)
主要な低コストインデックスファンド(eMAXIS Slimシリーズ、SBI・Vシリーズ等)はどちらでも購入可能です。取扱数の差よりも「必要なファンドを取り扱っているか」の確認が重要です。
米国株・海外ETFの取引環境
SBI証券:米国株・ETFの取引手数料が実質無料(SBI証券の米国株取引は1注文最低0ドル)。為替手数料は片道0.25円/ドル。
楽天証券:米国株・ETFの取引手数料は1注文0.495%(最低0米ドル・最大22米ドル)。楽天カードでの米国株投資はできない。
米国個別株や米国ETFへの投資を考えている方はSBI証券が有利です。
証券会社開設後の「最初にやること」チェックリスト
口座を開設した後、多くの方が「何から始めればいいか分からない」という状態になります。最初の手順を整理します。
Step1:NISA口座が有効になっているか確認する
証券口座とNISA口座は別々に申請・審査されます。口座開設完了メールが届いても、NISA口座の審査が別途必要です(税務署への申請)。「NISA口座有効」のメールが届くまで待ってください。通常1〜2週間かかります。
Step2:購入するファンドを決める(迷ったらオルカン)
証券会社の検索画面で「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」または「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を検索します。どちらも「つみたて投資枠対象商品」に含まれていることを確認してください。
Step3:積立金額と引落方法を設定する
「毎月積立」の設定画面で、金額(月1万円〜)と引落方法(証券口座からの引落またはクレジットカード)を設定します。クレカ積立の場合は事前にカードを登録しておく必要があります。
Step4:積立日を設定して完了
毎月何日に積立てるかを設定します。SBI証券は毎月1日、楽天証券は1日か毎月最初の営業日を選べます。積立日にはあまり深い意味はありません(ドルコスト平均法で長期では均されます)。
「積立設定をしたら、しばらく放置が正解」
ここが最も重要なポイントです。積立設定を完了した後、多くの方が「毎日相場を確認してしまう」状態になります。これは長期積立の大敵です。
「含み損が出た → 一時停止しようか」「別のファンドの方が良いのでは → 乗り換えようか」——こういう考えが頭をよぎることは自然です。しかし長期のデータが示すのは、「設定して放置し続けた投資家が最終的に最も良いリターンを得ている」という事実です。
証券口座の確認頻度は月1回以下で十分です。積立金額の変更が必要な時(収入が増えた・減った)、ライフイベントの変化(結婚・出産等)の時だけ設定を見直す。それ以外は触らない——これが「正しい放置」の形です。
「NISA口座を変更したい」場合のルール
「SBI証券でNISAを開いたが、楽天に変えたい」という場合の手続きについて。
NISA口座は1人1口座(同じ年に1社のみ)という制限があります。ただし翌年から別の証券会社に変更することは可能です。
手続きの流れ:10〜12月に「金融機関変更届出書」を現在の証券会社に提出 → 勘定廃止通知書を受け取る → 新しい証券会社でNISA口座開設申請 → 翌1月から新しい口座でNISAが使える。
ただし「既に現在のNISA口座に投資した分」は原則としてそのまま残ります(移管のルールは複雑)。「最初から長く付き合える証券会社を選ぶ」という視点が重要で、「少し還元率が良いから変えよう」という理由での頻繁な移し替えは得策ではありません。
松井証券・auカブコム証券——ニッチなニーズには向く場合も
大手以外の選択肢として、松井証券とauカブコム証券を簡単に紹介します。
松井証券は50歳以上の方に「松井証券NISA口座向けの特典」があり、信託報酬の一部をポイントキャッシュバックするサービスがあります。高齢の親御さんに勧める場合、シンプルなUI(操作画面)が使いやすいという声もあります。
auカブコム証券はauユーザー(au PAYカード積立)でポイントが使える特典があります。au経済圏のヘビーユーザーには検討の余地があります。
ただしこれらはニッチなニーズを持つ方向けです。投資初心者や「迷ったらどこ」という方にはSBI証券か楽天証券の2択が引き続き最良の選択です。
まとめ——迷ったら今日中にSBI証券で申し込む
この記事で証券会社比較の情報を提供しましたが、最後に最も重要なことを言います。
「完璧な証券会社を探すこと」に時間を使うより、「今日中に申し込んで積立を始めること」の方が資産形成に圧倒的に貢献します。
SBI証券でも楽天証券でも、eMAXIS Slimオルカンを毎月積立設定すれば長期で大きな差はありません。「どこが0.1%ポイントが多い」より「1ヶ月でも早く始めること」の方が複利の観点では価値があります。
今日中に手続きを始めてください。口座開設申請は15〜30分で完了します。
著者
岸 泰裕(きし やすひろ)
早稲田大学大学院金融工学MBA取得。元外資系バンカー。財務・IR・ガバナンス・ESG専門。著書3冊、累計調達額480億円、明治大学リバティアカデミー講師(2014年〜)。