東証グロース市場上場の現場で学んだこと——2025年3月21日を迎えるまでの2年間

【この記事の結論】 東証グロース市場への上場審査で最も問われるのは「利益の質」「内部統制の実効性」「資本政策の合理性」の3点です。ミーク株式会社の財務・IR担当として上場準備の全プロセスに関与し、2025年3月21日の上場を実現した経験から、準備の実態を解説します。


2025年3月21日。ミーク株式会社が東証グロース市場に上場した日を、私は今も鮮明に覚えています。

2023年5月に財務・IR担当として入社し、内部統制の整備・上場準備・IR体制の構築・内部監査室の兼務まで担った約2年間。この経験を通じて、「上場とは何か」を現場の最前線で学びました。

本記事では、上場準備の実態を、書籍やセミナーでは語られない視点でお伝えします。


1. 上場審査「財務面」の3大論点

① 利益の質——「本当に継続的に稼げているか」

審査担当者が最も時間をかけるのが「利益の質」の検証です。

売上高が成長していても、その多くが「一時的・非反復的な収益」であれば、継続的な利益創出能力が疑われます。関係会社取引・売上の先行認識・コストの先送りによる利益の嵩上げ——これらは審査の中で徹底的に掘り下げられます。

会計的に適法であっても、利益の構造・質に問題があれば上場は認められません。

② 内部統制の実効性——「管理の仕組みが本当に機能しているか」

上場企業にはJ-SOX(内部統制報告制度)への対応が求められます。審査で問われるのは「仕組みが存在するか」ではなく「仕組みが実際に機能しているか」です。

稟議プロセス・承認権限・帳票管理・IT統制——これらが形式だけでなく、組織の実態として機能していることの証明が求められます。内部監査室を兼務した経験から、「書類上は整っているが実態が伴っていない」内部統制がいかに審査リスクになるかを実感しています。

③ 資本政策の合理性——「株主構成に問題はないか」

上場前の資本政策は後から修正が極めて困難です。創業株主と外部投資家の持分比率・種類株式の設計・ストックオプションの発行条件・主要株主の素性——これらが審査で詳細に検討されます。

上場準備の初期段階から資本政策を正しく設計しておくことが、審査を円滑に通過するための最重要事項のひとつです。


2. 上場準備「2年間のリアル」

ミーク株式会社での2年間、私が担ったのは以下の業務です。

  • 上場準備全般の財務・IR対応
  • 内部統制の設計・整備・評価(J-SOX)
  • 取引与信等のリスク管理体制構築
  • エクイティIR(株式投資家向け)業務
  • デットIR(銀行・証券・保険等の金融機関向け)業務
  • 信用調査機関との対応
  • 内部監査室の兼務(2024年より)

上場は「申請すれば通る」ものではありません。主幹事証券・監査法人・東証審査担当との長期にわたる対話の中で、何度も指摘を受け、修正し、再提出するプロセスを繰り返します。


3. 上場後に待っていること——「本当の開示責任の始まり」

上場は「ゴール」ではありません。上場後には以下の義務が発生します。

  • 四半期・通期の決算開示(適時開示)
  • 有価証券報告書・決算短信の作成
  • IR活動(個人・機関投資家向け説明会)
  • コーポレートガバナンス報告書の作成・開示
  • 内部統制報告書の作成(J-SOX)

特に「上場直後の1〜2年」は、市場からの監視が最も厳しい時期です。上場を果たした後こそ、ガバナンス・財務開示・IR の実力が問われます。


まとめ:上場は「財務の実力」が試される長い旅

東証グロース市場への上場は、財務・IR・内部統制・ガバナンスの実力を総合的に問われる2〜4年間のプロセスです。

「いつかIPOしたい」という経営者の方には、今から財務の土台を整えることを強くお勧めします。上場準備の段階で「財務の実力が足りない」と気づいても、そこから構築するには相当の時間がかかります。


上場準備の財務支援・社外取締役のご依頼はCONTACTページよりお問い合わせください。

著者:岸 泰裕|早稲田大学大学院ファイナンス研究科(金融工学MBA)修了。日興シティホールディングス・スタンダードチャータード銀行東京支店にて財務実務を経験。アルテリア・ネットワークスにて財務部長補佐・資金課長(480億円規模のシローン組成・R&I A格取得)。ミーク株式会社にて東証グロース市場上場(2025年3月21日)に関与。明治大学リバティアカデミー講師。著書2冊(成美堂出版)。

最近の記事