FP(ファイナンシャルプランナー)2級は取るべきか? 元外資系バンカーが本音で答える

「FP2級を取れば転職に有利になりますか」——このご質問を、これまで何度も受けてきました。結論から言えば、FP2級という資格単体が転職の決め手になることは、正直あまりありません。以前、財務部門の中途採用面接をしていたとき、履歴書にFP2級と書いてきた応募者に「この資格で何が変わりましたか」と聞いたことがあります。返ってきたのは「勉強した内容が実務で役立っています」という一般論だけでした。資格の名前より、その先に何があるかを聞かれて答えられるかどうか。ここが採用側の本音です。

FP2級とは、そもそも何の資格か

FP(ファイナンシャルプランナー)2級は、正式には「2級ファイナンシャル・プランニング技能士」という国家資格です。ライフプランニング、税金、不動産、相続、保険、金融資産運用という、お金にまつわる6分野を横断的に学びます。日本FP協会や金融財政事情研究会(きんざい)が試験を実施しており、3級が入門編だとすれば、2級は実務でひとまず使えるレベルの基礎知識を証明する資格です。

合格率と、勉強時間の現実

合格率は実技試験を含めておおむね40〜60%台。国家資格としては難関の部類ではありません。ただし6分野を横断する広さに、多くの人が苦戦します。3級を持っていれば150時間程度、まったくの初学者なら200〜300時間程度が目安です。毎日1時間勉強しても半年弱。気軽に取れる資格ではないと、最初に申し上げておきます。

独学かスクールか

市販のテキストと問題集を繰り返せば、独学でも十分に合格を狙えます。私が採用面接で見てきた限り、独学合格者とスクール受講者で、その後の実務能力に大きな差は感じません。スクールを検討する価値があるのは、勉強時間の確保が苦手な方、実技の解き方に不安がある方、そしてAFP資格も同時に取りたい方です。AFP認定研修を修了すれば、2級合格と同時にAFP資格も得られるため、この場合は講座受講が事実上必須になります。それ以外の方は、まず市販テキストを1冊通読してから判断してください。数万円のスクール費用は、その後でも遅くありません。

「転職に有利になるか」という、一番聞かれる質問

ここが本題です。私が外資系金融機関や上場企業の財務の現場で採用に関わってきた中で、FP2級の有無だけで合否が決まったケースは記憶にありません。企業が見ているのは資格そのものより、それを通じて何を学び、実務でどう活かせるかという説明力です。冒頭でお話しした応募者は、結局この説明ができず、採用には至りませんでした。

ただし業界によっては話が変わります。保険、不動産、銀行の窓口業務など、お客様のライフプランに直接関わる職種では、FP2級やAFPが実質的に必須、あるいは強く推奨されます。この業界を目指す方にとって、取得する意味は明確です。

資格は「入場券」であって「実力証明書」ではない

私がセミナーでよく伝えているのは、まさにこの表現です。FP2級を取ったからといって、相談業務がすぐにできるようになるわけではありません。勉強で得られるのは体系立った知識の枠組みであり、そこに実務経験という中身を積み重ねて、初めて資格が意味を持ちます。順番としては、資格で土台を作り、経験で肉付けする形が現実的です。

仕事のためでなく、自分の家計のために

転職や仕事のためではなく、自分自身や家族の資産形成の知識を体系的に身につけたいという理由で検討する方も少なくありません。この目的なら、学習内容は非常に実用的です。税金、保険、住宅ローン、相続、資産運用という、人生で必ず関わるテーマを一通り学べるため、「知らなかったせいで損をする」場面を減らせます。仕事に直結しなくても、この価値は十分にあります。

AFP・CFPという、その先のステップ

FP2級に合格し、AFP認定研修も修了すると、AFP資格を取得できます。さらにその先には国際資格のCFPがあります。CFPは6課目すべてに合格する必要があり、難易度は大きく上がりますが、独立や本格的な相談業務を目指すなら視野に入る選択肢です。多くの方は2級・AFPの段階で目的を達成できるため、まずは2級の学習を通じて、この分野をさらに深めたいかどうかを見極めてください。

判断に迷ったら

保険・不動産・銀行など金融関連業界を目指す方、独立系FPを考えている方、自分と家族の資産形成を体系的に学びたい方には、明確に取る価値があります。逆に、金融と無関係な業界での転職を考えているなら、資格取得の時間をその業界の専門スキル習得に充てた方が効果的な場合が多いでしょう。「取って損はない」はどんな資格にも言えることです。限られた時間をどこに投資するか、目的をはっきりさせてから着手してください。

実践ステップ

  1. 市販のFP2級テキストを1冊購入し、まず1周通読してみる
  2. 自分の目的(仕事のためか、家計のためか)を明確にする
  3. 継続に不安があれば、スクールやAFP認定研修の受講を検討する
  4. 過去問を繰り返し解き、実技試験の解き方に慣れる
  5. 合格後は、学んだ知識を自分の家計や仕事の中で実際に使ってみる

まとめ

FP2級は、それ単体で転職市場の切り札になる資格ではありません。しかし金融関連業界を目指す方や、自分の資産形成を体系的に学びたい方にとっては、確かな価値のある資格です。ゴールではなく土台として捉え、その先の実務や実生活でどう活かすかを、取得前に一度考えてみてください。

よくある質問

Q. FP2級から始めるべきですか、それとも3級から始めるべきですか?

A. 金融の基礎知識がある程度ある方は、2級からの受験も可能です。ただし初学者の場合は、3級から段階的に学んだ方が全体像をつかみやすく、結果的に近道になることが多いです。

Q. FP2級だけで独立してFPとして働けますか?

A. 資格上は可能ですが、実務上は経験や人脈、専門分野の深掘りが不可欠です。独立を目指すならAFP・CFPの取得や、金融機関での実務経験もあわせて検討してください。

Q. 勉強にはどのくらいの費用がかかりますか?

A. 独学であれば、テキストと問題集で1万円前後から始められます。スクールや通信講座を利用する場合は数万円程度が一般的な相場です。AFP認定研修とセットになった講座は、やや費用が高くなる傾向があります。

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著者プロフィール

岸 泰裕|早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了(金融工学MBA)。外資系金融機関を経て、上場企業で財務部長・財務責任者を歴任。480億円のシンジケートローン組成、R&IのA-格付取得を主導し、東証グロース市場への上場(2025年3月)に財務・IR担当として関与。現・イグニションポイント株式会社 財務担当マネージャー。明治大学リバティアカデミー講師。著書3冊。近著『日本株「配当×株主優待」で生活費消し込み投資』(ART NEXT)。詳しい経歴はプロフィールをご覧ください。

著者

岸 泰裕(きし やすひろ)

早稲田大学大学院金融工学MBA取得。元外資系バンカー。財務・IR・ガバナンス・ESG専門。著書3冊、累計調達額480億円、明治大学リバティアカデミー講師(2014年〜)。

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