企業・自治体向け「金融リテラシー研修」の設計と価値——明治大学講師が語る教育の現場

【この記事の結論】 企業・行政が従業員・市民向けの金融リテラシー研修を提供することは、福利厚生・採用競争力・生産性向上において明確な価値をもたらします。2014年から続く明治大学リバティアカデミーでの講師経験と、外資系金融機関・上場企業での財務実務経験を組み合わせた研修を提供しています。


「社員が老後のお金に不安を抱えていて、仕事に集中できていない気がする。何かできますか?」

企業の人事担当者からこのような相談を受けることが増えています。2024年からの新NISA制度の本格稼働・インフレの定着・年金への不安——これらが重なり、「職場での金融教育」への需要が急速に高まっています。

私は2014年から明治大学リバティアカデミーにて、社会人向けの金融リテラシー講義を担当してきました。「金融リテラシーの基礎」「コーポレートファイナンス」「ESG/SDGsとは」等の講義を通じて、累計多数の社会人受講生に金融の実践知識をお届けしてきました。


1. なぜ「職場での金融教育」が必要なのか

金融の不安が「仕事への集中」を妨げている

老後資金・住宅ローン・投資判断——こうした金融上の不安を抱えたまま働く従業員は、仕事への集中力が低下しやすいことが知られています。

「何をすればいいかわからない」という知識ギャップが最大の問題です。新NISAという制度が用意されても、口座の選び方・商品の選び方・積立の始め方がわからなければ、行動には移れません。研修で「明日からできる具体的な一歩」を示すことで、行動変容が生まれます。

採用・定着における差別化要素になっている

「資産形成支援研修を実施している会社」というブランドは、特に20〜30代の採用において差別化要素になり始めています。従業員の長期的な経済的安心感を支援することが、エンゲージメントと定着率の向上につながります。


2. 提供している研修プログラム

【プログラム①】新NISA・資産形成入門(2〜3時間)

対象: 全社員・新入社員・若手社員 内容: 新NISAの仕組み・口座の選び方・インデックス投資の基礎・積立の始め方・よくある失敗パターン

外資系金融機関の実務経験と著書2冊を通じて培った「プロが本音で語る」スタイルで、机上の知識ではなく「明日から使える行動指針」を伝えることを主眼に置いています。

【プログラム②】管理職・経営幹部向け財務リテラシー研修(半日〜1日)

対象: 経営幹部・管理職・次世代リーダー 内容: 財務三表の読み方・ROE/PBR/PER等の経営指標・資本コストの概念・コーポレートガバナンスの実践・ESGと企業価値

「財務部門出身ではない経営幹部が、財務的な思考を持てるようにする」ことを目的とした実践的な内容です。日興シティホールディングス・スタンダードチャータード銀行・アルテリア・ネットワーク・ミーク株式会社の上場プロセスまで、一貫した財務実務の経験に基づいています。

【プログラム③】行政・自治体向け金融教育研修

対象: 自治体職員・公民館・図書館での一般市民向け 内容: 家計管理の基礎・インフレと現金の関係・老後資金の考え方・金融詐欺の見分け方・新NISAの正しい活用法

J-FLEC(金融経済教育推進機構)の認定制度への準拠を意識した設計で、政府・金融庁の推奨するアプローチに沿った内容です。

【プログラム④】ESG・サステナビリティ研修(2〜4時間)

対象: 経営陣・IR担当・財務担当・広報担当 内容: ESGの基礎・非財務情報の開示・格付機関・投資家との対話・サステナビリティ計画の策定

アルテリア・ネットワークスでのサステナビリティ計画策定PJへの参画・R&I格付取得における非財務情報の活用経験をベースにした実践的な内容です。早稲田大学大学院会計研究科「財務経営陣のための会計・ESG講座」を修了しており、ESGと企業価値の連動について現場に即した解説が可能です。


3. 研修の「質」を決める3つの要素

① 体験に基づく語り:「外資系銀行でこういうケースを見た」「上場プロセスで実際にこの問題が起きた」という実体験に基づく話が、記憶に残り行動につながります。

② 受講者レベルへのカスタマイズ:新入社員向けと経営幹部向けでは、最適な内容・深度・言葉が全く異なります。事前のヒアリングと対象に合わせた設計を必ず行います。

③ 行動まで落とし込む設計:研修の成果は「知識が増えた」ではなく「行動が変わった」で測られます。「研修後に口座開設した」「家計の見直しを始めた」——この行動変容を促す設計を意識しています。


まとめ:金融教育は「コスト」ではなく「人材への投資」

従業員の金融リテラシーを高めることは、会社への信頼・仕事への集中力・長期的なエンゲージメントへの確かな投資です。


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著者:岸 泰裕|早稲田大学大学院ファイナンス研究科(金融工学MBA)修了。明治大学リバティアカデミー講師(2014年〜)。日興シティホールディングス・スタンダードチャータード銀行東京支店・アルテリア・ネットワークス・ミーク株式会社(東証グロース上場)にて財務実務を経験。著書『新NISAではじめる米国株』『はじめての米国株入門』(成美堂出版)。

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