日経平均4000円超急落。地政学リスクの本質

岸泰裕です。

2026年3月、日経平均が一時4100円超の急落を記録しました。終値ベースでも約2900円安と、歴史上3番目の下げ幅です。
SNSには「暴落だ」「資産が溶けた」という悲鳴があふれ、直後には急反発で「1700円超の上昇」と、まるでジェットコースターのような相場が展開されました。

しかし、私はこの騒動を見ながら、ひとつの冷静な問いを立てています。「あなたは今回の急落で、何を学んだか?」

1. 「地政学リスク」は急落の「理由」ではなく「口実」だ

今回の急落の原因として、中東情勢の緊迫化=地政学リスクが挙げられています。確かにホルムズ海峡封鎖は実体経済への影響を持ちます。

しかし外資系金融機関での経験から言わせてもらえば、機関投資家・ヘッジファンドは「地政学リスク」を売り崩しのトリガー(引き金)として利用します。
すでに大量の日本株を保有し「売りたいタイミング」を探していた機関投資家にとって、「中東緊迫化」という誰もが納得するリスク材料は、利益確定売りを一斉に浴びせる絶好の「大義名分」です。

急落の翌日に「地政学リスクへの過度な警戒感が後退」として急反発したという事実が、この構造を如実に示しています。実体経済が1日で変わるはずがない。急落も急反発も、プロの資金移動のシナリオ通りです。

2. 日経平均5万4000円台の「現在地」を財務で読む

今回の急落前、日経平均は5万円台後半で推移していました。PER(株価収益率)で見ると、この水準は企業の実力に対して決して割安ではありません。

上場企業の5年連続最高益という事実はありますが、その利益の多くは円安による為替差益と、コスト削減(主に人件費の実質抑制)によるものです。円安が修正され、原油高でコストが上昇すれば、「最高益」の構造は脆くも崩れます。
5万円台の株価が「実力」を反映しているという楽観論には、私は一定の懐疑を持っています。

3. 急落時にすべきこと・してはいけないこと

急落時に個人投資家がやりがちな最悪の行動が二つあります。
一つは「狼狽売り」。下がった瞬間に全部売る。これは「安く買って高く売る」の真逆で、プロの投資家に富を献上する行為です。
もう一つは「ナンピン買いの無限地獄」。下がるたびに買い増して平均取得価格を下げようとするが、さらに下がり続けて退場するパターンです。

急落時に正しい行動は何か。「事前に決めた投資ルールを淡々と実行すること」だけです。感情で動いた瞬間に、あなたはプロに負けます。

結論:ボラティリティは「リスク」ではなく「機会」と読める者だけが勝つ

今回のような歴史的急落と急反発は、長期投資家にとっては「市場が安売りセールをしてくれた瞬間」です。
ただし、それを機会にできるのは、事前に現金比率を確保し、パニックにならない精神的・財務的準備ができている人だけです。

急落を見て「なぜ誰も教えてくれなかったのか」と嘆く人は、いつまでも市場の「カモ」であり続けます。急落こそが最大の金融教育です。その授業料を、次に活かせるかどうか、すべてはあなたの思考の質にかかっています。

「地政学リスク」を投資に組み込む——無視でも過剰反応でもなく

4000円超の急落が起きると、SNSには「今すぐ全部売れ」という声と「絶対に売るな」という声が溢れます。両方とも感情論です。プロ投資家はこういう局面で「地政学リスクの性質」を分析し、合理的に対応します。

地政学リスクは大きく2種類に分けられます。

  • 「一時的な摩擦」:貿易摩擦・外交上の緊張など、経済の基本的な仕組みを変えないリスク。株価の一時的な下落後に回復するケースが多い
  • 「構造的な変化」:ブロック経済化・エネルギー供給網の恒久的変化・基軸通貨の変動など、経済の土台を変えるリスク。この場合は長期的な資産配分の見直しが必要

今回の急落がどちらのリスクに起因するかを冷静に分析することが、最初のステップです。

急落時に「買い増す」ための事前準備

「暴落時に買い増せる人」は、事前の準備が整っている人だけです。暴落が来てから「どうしよう」と考え始めても遅い。以下の準備を平時から整えておきましょう。

  1. 現金比率の確保:投資資産全体の20〜30%を常に現金で確保。これが「弾薬庫」になる
  2. ウォッチリストの作成:平時から「この株がいくらになったら買いたい」というリストを準備しておく。急落時にはリストを確認するだけで行動できる
  3. 損失耐性の確認:ポートフォリオが30%下落した場合の金額を計算し、それでも生活と精神が持ちこたえられるかを事前に確認しておく

相場の世界では、「準備していない人にとっての危機」が「準備している人にとってのチャンス」になります。この非対称性こそが、長期投資の醍醐味です。


参考・公式資料

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