【この記事の結論】 2026年の日本株は「全否定でも全肯定でもない」というのが正直な評価です。企業のROE改善・株主還元強化・外国人投資家の注目という追い風がある一方、円高リスク・内需の弱さ・地政学的リスクという逆風も存在します。個人投資家には「オルカンのサテライトとして日本株ETFを少量保有する」程度の関与が現実的です。
「日本株、今からでも買えますか?」
2024年2月に日経平均が34年ぶりに史上最高値を更新して以来、この質問が急増しました。バフェット氏の商社株買い増し・東証のROE改善要請・新NISAによる個人マネーの流入——日本株に追い風が吹いているのは事実です。
しかし外資系証券・銀行の財務部門で働いてきた立場から申し上げると、「みんなが注目しているときこそ、冷静に数字を見る習慣」が最も重要です。
1. 日本株への追い風:3つの構造的変化
① 東証の「資本コスト・株価を意識した経営」要請
2023年以降、東京証券取引所がPBR1倍割れ企業に対して自社株買い・増配・事業再編による資本効率改善を要求しています。これは過去20〜30年の「内部留保を積み上げるだけ」という経営姿勢からの構造的な転換を促す動きです。
実際に自社株買い・増配を発表する企業が増加しており、株主還元の観点から日本株の魅力が高まっています。
② 外国人投資家の再評価
バフェット率いるバークシャー・ハサウェイによる日本の商社株保有継続は、「日本株は割安で株主還元が期待できる」という国際的な評価を引き上げました。外国人投資家の日本株への資金流入が増加しています。
③ インフレと賃上げによる「デフレ脱却」の兆候
30年続いたデフレを脱却し、適度なインフレが定着することは、企業の価格転嫁力・売上高成長・名目利益拡大につながります。
2. 日本株への逆風:見落とせないリスク
① 円高リスク
日銀の利上げが進む場合、円高が日本の輸出企業の業績を直撃します。トヨタ・ソニー・任天堂などの主要輸出企業は、円高1円で数十〜数百億円の営業利益が変化します。日経平均の多くを占める輸出企業にとって、円高は最大のリスク要因です。
② 内需の弱さ
実質賃金がプラスに転じるかどうかはまだ不透明で、個人消費の本格回復には時間がかかる可能性があります。内需型企業(小売・外食・サービス)への影響が懸念されます。
③ 地政学的リスク
中国経済の減速・台湾有事リスク・米中対立の激化は、アジア株全体に影響を与えます。日本株も地政学的なリスクから無縁ではありません。
3. 日本株への投資手段と個人の対応
手段①:日本株ETF(東証上場)
- 1306(TOPIX連動型上場投資信託)
- 1321(日経225連動型上場投信)
- 2558(MAXIS米国株式(S&P500)上場投信)※ 参考
手段②:日本株インデックスファンド 「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」など、NISAのつみたて投資枠でも購入可能な低コスト商品があります。
個人投資家への推奨スタンス: ポートフォリオのコアはオルカン・S&P500で構成し、日本株への投資は全体の10〜20%程度のサテライトとして位置づけることが合理的です。「日本株だけに集中する」という選択は、上述のリスクを考えると過度な集中になります。
まとめ:日本株は「見直しの時代」に入ったが、万能ではない
東証の改革・外国人投資家の評価・株主還元の強化——これらは確かに日本株の長期的な構造改善を示しています。しかし「日経平均が4万円を超えたから今が買い時」という単純な判断には慎重であるべきです。
バリュエーション・為替・業績の三点セットを確認した上で、グローバル分散のサテライトとして日本株を位置づける——この冷静な視点が、2026年の日本株市場との正しい付き合い方です。
FAQ
Q. バフェット氏が買っている商社株は今も買いですか? A. バフェット氏の投資判断と個人投資家の状況は異なります。商社株はバリュエーション・配当利回り・資源価格の動向を総合的に判断する必要があります。個別銘柄よりTOPIX ETFで日本株全体に分散する方がリスク管理上は安全です。
Q. NISAの成長投資枠で日本の個別株を買うことはアリですか? A. アリですが、損益通算できないNISA口座での個別株保有はリスク管理を慎重に行う必要があります。財務分析に自信がある方に限定することを推奨します。
著者:岸 泰裕|早稲田大学大学院ファイナンス研究科(金融工学MBA)修了。日興シティホールディングス・スタンダードチャータード銀行にて財務実務を経験。明治大学リバティアカデミー講師。著書『新NISAではじめる米国株』(成美堂出版)。