資産運用で「絶対にやってはいけない」5つのこと——元外資系バンカーが実例で語る

【この記事の結論】 資産運用で失敗する人の行動パターンは驚くほど共通しています。「情報の少ない投資への一極集中」「FXのレバレッジ取引への依存」「元本保証に見える高利回り商品への飛びつき」「暴落時の狼狽売り」「手数料の見落とし」——これら5つを避けるだけで、多くの失敗を防ぐことができます。


財務の現場で働いてきた20年間、そして明治大学での講師活動を通じて、私は多くの人の「資産運用の失敗」を見てきました。

失敗のパターンは驚くほど似通っています。「知識より感情で動く」「リスクを取っている自覚がない」「コストを軽視する」——これらの行動が、資産を増やすどころか確実に減らしていきます。

本記事では、実際に多くの投資家が陥ってきた「やってはいけない5つの行動」を、実例を交えて解説します。


やってはいけないこと①:「絶対に儲かる話」への投資

「元本保証で年利10%」「この情報を知っている人だけが儲けている」——このような話が本当に存在するなら、なぜあなたに教えてくれるのでしょうか。

ファイナンス理論の大原則として「リスクなきリターンは存在しない(No Free Lunch)」があります。国債(リスクフリーレート)を超えるリターンを得るためには、必ず相応のリスクを取る必要があります。「高リターン・低リスク」は矛盾であり、それを提供すると言われたら詐欺のシグナルです。

過去に大きな話題になった「ポンジスキーム」型の投資詐欺の多くは、「元本保証の高利回り」という触れ込みで被害を拡大させました。

対処法:「なぜこのリターンが可能なのか」をリスクの観点から説明できない商品には近づかない。


やってはいけないこと②:レバレッジFXへの依存

FX(外国為替証拠金取引)は、少額の証拠金で大きな額の通貨取引を行える「レバレッジ」が特徴です。日本ではレバレッジの上限は25倍(個人の場合)です。

100万円の証拠金で2,500万円分の通貨を取引している場合、為替が1%動いただけで証拠金の25%(25万円)が吹き飛びます。4%の逆方向の動きで証拠金がほぼゼロになります。

金融庁のデータでは、FXの個人投資家の多くが長期的には損失を被っていることが示されています。為替の短期的な動きを継続的に正確に予測することは、プロのトレーダーでも困難です。

対処法:FXを資産形成の中心に据えない。外貨資産を持つなら、インデックスファンドやETFを通じた長期投資の方が合理的。


やってはいけないこと③:個別株への過度な集中投資

「この会社は絶対に伸びる」という確信のもと、資産の大部分を1〜2銘柄に集中させることは、財務的に非常に危険です。

企業固有のリスク(経営陣の不祥事・製品の欠陥・業界の構造変化)は、どれだけ調査しても完全には読み切れません。1社の株価が90%下落することは、歴史上繰り返されています(エンロン・ライブドア・東芝等)。

「この会社に全財産を賭けてもいいか」——この問いにYesと即答できる人は、おそらく現実のリスクを正確に把握していません。

対処法:個別株への投資はポートフォリオの20〜30%以内に留め、コアはインデックスファンドで分散する。


やってはいけないこと④:手数料・コストの軽視

「たった1.5%の信託報酬なんて大した問題ではない」——この感覚が、30年後に数百万円の損失を生みます。

元本300万円、月3万円の積立、年率5%の運用リターンを前提に、信託報酬0.1%と1.5%の違いを30年間で比較すると、最終資産の差は約250〜300万円にも達します。

コストは「確実なマイナスのリターン」です。相場が良い年も悪い年も、信託報酬は毎日少しずつ差し引かれ続けます。

対処法:信託報酬0.1%以下の低コストインデックスファンドを選ぶ。コストの違いを30年スパンで計算する習慣を持つ。


やってはいけないこと⑤:「今だけ・先着・限定」に乗せられた一括投資

「今がチャンス」「期間限定のキャンペーン」——このような煽り文句は、投資判断を急がせ、冷静な分析を阻害するために設計されています。

投資において「緊急性」は、ほぼすべてのケースで錯覚です。市場は毎日開いており、1日・1週間の判断遅れが最終リターンに与える影響は微小です。一方、急いで判断した結果の誤った投資は、長期にわたって資産を毀損し続けます。

対処法:「今すぐ決めなければならない投資」は存在しないと認識する。すべての投資判断に最低24〜48時間の熟考時間を設ける。


まとめ:資産運用の最大の敵は「感情」と「無知」

この5つの「やってはいけないこと」に共通するのは、「感情(恐怖・欲望・焦り)」と「知識の不足」が引き起こすという点です。

正しい知識を持ち、感情ではなくルールで投資判断をする仕組みを作ること——これが、資産運用で長期的に成功するための唯一の方法です。


FAQ

Q. 友人や知人から投資の話を持ちかけられた場合、どう断ればいいですか? A. 「個人の資産運用の方針として、他者からの推薦商品には投資しないと決めています」と明確に伝えることが最善です。人間関係を理由に投資判断を曲げることは、お金と人間関係の両方を失うリスクがあります。

Q. 仮想通貨(暗号資産)への投資はやってはいけないことですか? A. 投機的資産として、資産全体の5%以内という少額に限定するなら許容範囲です。資産形成の中心に据えることは、価格変動の激しさと制度リスクの観点から推奨しません。

Q. 銀行の窓口で勧められた投資信託は買っても大丈夫ですか? A. 銀行窓口で販売される投資信託は、販売手数料・信託報酬が高い商品が多い傾向があります。購入前に信託報酬(年率)を必ず確認し、0.5%を超える場合はネット証券での低コスト代替商品を検討することを推奨します。


著者:岸 泰裕|早稲田大学大学院ファイナンス研究科(金融工学MBA)修了。日興シティホールディングス・スタンダードチャータード銀行にて財務実務を経験。明治大学リバティアカデミー講師。著書『新NISAではじめる米国株』(成美堂出版)。

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