【この記事の結論】 投資をしている人が確定申告をすべきケースは「①NISA口座以外で利益が出た特定口座(確定申告不要を選んでいない場合)」「②複数の証券会社で損益通算したい場合」「③外国税額控除を受けたい場合」「④副業収入が20万円を超えた場合」です。正しく確定申告することで、数万〜数十万円の還付が受けられるケースがあります。
「確定申告って、サラリーマンには関係ないですよね?」
明治大学の講義でこの質問を受けたとき、私は必ずこう答えます。「投資をしているなら、関係大ありです。」
外資系金融機関で働いていた当時、確定申告の仕組みを理解しているかどうかで、同じ投資成果から手元に残るお金が数万〜十数万円変わるケースを何度も見てきました。「難しそうだから」という理由で避けていると、本来受け取れるお金を見逃し続けることになります。
1. 投資家が確定申告をすべき4つのケース
ケース①:複数の証券会社で損益通算したい
A証券で50万円の利益、B証券で30万円の損失が出た場合、合計の課税対象は20万円になるはずです。しかし証券会社をまたいだ損益通算は、確定申告をしなければ自動的には行われません。
放置すると:A証券での50万円の利益に約20%(10万円)が課税される 確定申告すると:20万円の純利益に約20%(4万円)が課税される 差額:約6万円の節税
ケース②:損失の繰り越し控除
株式投資での損失は、確定申告することで翌年以降3年間にわたって将来の利益と相殺することができます(損失の繰越控除)。
今年100万円の損失が出た場合、確定申告して繰り越しておけば、翌年・翌々年に利益が出たときにその損失を差し引いて課税額を減らすことができます。確定申告しなければこの権利は消滅します。
ケース③:外国税額控除
米国ETFや外国株の配当には、米国で10%の源泉税が課されます。この外国源泉税は、確定申告で「外国税額控除」の申請をすることで、日本の税金から一部を取り戻すことができます。
NISA口座での外国株配当については対象外ですが、特定口座・一般口座での保有分については控除申請の価値があります。
ケース④:副業収入が20万円を超えた
会社員として給与所得がある場合、副業(ブログ・コンサルティング・フリーランス等)の収入が年間20万円を超えると確定申告が必要です。申告漏れは「脱税」として追徴課税の対象になるため、必ず申告してください。
2. 確定申告の基本フロー
ステップ①:必要書類の準備(1〜2月)
- 証券会社の「年間取引報告書」(1〜2月に郵送またはオンラインで入手)
- 給与所得の源泉徴収票
- 外国税額控除が必要な場合:外国株の配当支払通知書
ステップ②:確定申告書の作成(2〜3月) 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」(e-Tax)でオンライン作成が最もシンプルです。マイナンバーカードとICカードリーダー(またはスマートフォン)があれば、自宅から完結できます。
ステップ③:申告・納税または還付(3月15日まで) 申告期限は毎年3月15日です。還付申告(税金が戻ってくる場合)は1月から受け付けており、早めに申告するほど早く還付が受けられます。
3. 「特定口座・源泉徴収あり」を選んでいる場合
多くのネット証券では「特定口座・源泉徴収あり」を選ぶと、利益にかかる税金が自動的に源泉徴収されるため、原則として確定申告は不要です。
ただし「複数証券会社の損益通算」や「損失の繰越控除」を活用したい場合は、あえて確定申告することで税負担を減らせます。「確定申告不要」は「確定申告してはいけない」ではありません。
まとめ:確定申告は「義務」であり「権利」でもある
確定申告を正しく行うことは、法律上の義務であると同時に、過払い税金を取り戻す「権利」でもあります。
特に損益通算・損失繰越・外国税額控除の3つは、知っているだけで数万〜十数万円の節税が実現できる「埋蔵金」です。「難しそう」という心理的ハードルを超えてe-Taxを一度使ってみると、思いのほかシンプルだと気づくはずです。
FAQ
Q. 確定申告をしないとどうなりますか? A. 申告義務があるにもかかわらず申告しない場合、無申告加算税(最大20%)や延滞税が発生します。副業収入20万円超の申告漏れは特に注意が必要です。
Q. NISA口座の利益は確定申告が必要ですか? A. 不要です。NISA口座内の利益・配当は非課税のため、申告の義務はありません(外国源泉税の控除申請も対象外です)。
Q. 確定申告を税理士に頼む必要がありますか? A. 投資の損益通算・損失繰越程度であれば、e-Taxで自分で対応できます。副業収入が複雑な場合や、不動産投資・相続等が絡む場合は税理士への相談を推奨します。
著者:岸 泰裕|早稲田大学大学院ファイナンス研究科(金融工学MBA)修了。日興シティホールディングス・スタンダードチャータード銀行にて財務実務を経験。明治大学リバティアカデミー講師。著書『新NISAではじめる米国株』(成美堂出版)。