中国「デフレの輸出」が日本企業を殺す。2026年の生存戦略

岸泰裕です。

「最近、ECサイトで買うモノが異常に安い」
「100円ショップのガジェットが高機能すぎる」
そう感じたことはありませんか?

消費者としては嬉しいニュースかもしれません。
しかし、投資家、そして日本経済の一員としては、これほど恐ろしい現象はありません。

中国経済のバブル崩壊と減速が叫ばれて久しいですが、その影響は「爆買いの終了」といった生易しいものではありません。
今、世界経済で起きている最大のリスク。
それは、中国が過剰生産した製品を世界中に投げ売りする、**「デフレの輸出(ダンピング)」**です。

EV(電気自動車)、鉄鋼、化学製品、日用雑貨。
政府の補助金漬けで、採算度外視で作られた製品が、日本市場にも雪崩れ込んでいます。
これは日本の製造業に対する事実上の「経済的空爆」です。

今回は、2026年の日本株投資において絶対に避けて通れない「チャイナ・ショック2.0」と、このデフレ圧力の中でも生き残れる企業の条件について、3000文字超で徹底解説します。

1. 中国はなぜ「安売り」を止められないのか

通常の資本主義経済であれば、モノが売れなくなれば工場は生産を減らし、価格は調整されます。
しかし、中国の「国家資本主義」は力学が異なります。

ゾンビ企業の延命システム

不動産バブル崩壊により内需が冷え込んでいる中国ですが、工場を止めることは許されません。
なぜなら、工場を止めれば大量の失業者が生まれ、それが社会不安(共産党体制への不満)に直結するからです。

地方政府は雇用を守るため、そしてGDPの数字を作るために、赤字企業にも国有銀行を通じて融資を続け、工場を無理やり回し続けさせます。
作ってしまった膨大な在庫は、どうするか。
二束三文で海外へ輸出するしかありません。

これが「デフレの輸出」のメカニズムです。
彼らの目的は「利益」ではなく「稼働維持」と「外貨獲得」なので、日本企業がまともに価格競争を挑んでも勝てるはずがないのです。

2. 日本の「素材・汎用品」メーカーの危機

この波をモロに被るのが、日本の「素材産業」や「汎用部品メーカー」です。

鉄鋼・化学の悲鳴

例えば、鉄鋼業界。
中国製の安価な鋼材が東南アジア市場に溢れた結果、市況価格が暴落しています。
日本の高炉メーカーが高品質を謳っても、汎用分野では価格差に勝てず、シェアを奪われています。
石油化学製品も同様で、中国の新増設プラントから溢れ出る樹脂が、相場を破壊しています。

EV・自動車部品の淘汰

そして自動車業界。
BYDなどの中国EVメーカーは、垂直統合と規模の経済、そして補助金を背景に、驚異的な低価格車を投入しています。
2026年現在、東南アジアや欧州の一部では、日本車の牙城が崩され始めています。
これに伴い、系列の下請け部品メーカーも「値下げ圧力」と「発注減」のダブルパンチを受けています。

3. 2026年の株式市場「選別」の基準

では、日本株はもうダメなのか?
いいえ、すべての企業が死ぬわけではありません。
中国のデフレ輸出の影響を受けない、あるいは逆に利用できる「勝ち組」が存在します。

① 「非代替性」を持つ技術(Moat)

中国がどんなに安く作ろうとしても、技術的に模倣できない分野です。
代表格は**「半導体製造装置」**や**「高機能素材(フォトレジスト等)」**です。
これらは、安ければ良いというものではなく、「これがないと最先端のスマホやAIサーバーが作れない」というチョークポイント(急所)を握っています。
こうした企業は、価格決定権を維持できます。

② 「非中国」経済圏で稼ぐ企業

中国経済の影響を受けにくい市場、つまり**「米国」**や**「インド」**の内需に深く入り込んでいる企業です。
特に、米中対立(デカップリング)により、米国は中国製品を排除し、フレンドリーな国(日本など)からの調達を増やしています。
北米での売上比率が高い住宅メーカー、空調メーカー、インフラ関連企業は、中国デフレの嵐の外側にいます。

③ コンテンツ・IP(知的財産)

アニメ、ゲーム、キャラクター。
これらは「物質」ではないため、中国の過剰生産能力の影響を受けません。
むしろ、中国の若者の間でも日本のIPは人気があり、海賊版対策さえできれば、巨大な市場となります。
任天堂やソニー、東宝といった企業の強さは、2026年も健在です。

4. 結論:ポートフォリオの「脱・汎用品」を急げ

「PBRが1倍割れで割安だから」
「配当利回りが高いから」

そんな理由だけで、オールドエコノミーの素材株や、中国依存度の高い機械株を持っていませんか?
それは「割安(バリュー)」ではなく、将来の収益基盤が壊れている「バリュートラップ(割安の罠)」かもしれません。

中国の過剰生産問題は、構造的なものであり、数年は解決しません。
その間、価格競争に巻き込まれる企業は、利益を削り続け、体力を消耗します。

投資家としてやるべきことは明確です。
「価格競争に巻き込まれている企業」を売り、「価格を自分で決められる(プライシング・パワーのある)企業」へ資金をシフトすること。
デフレの嵐が過ぎ去った後、立っていられるのは後者だけです。

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