野党が掲げる「金融所得課税30%」の悪夢。選挙後に始まる「富裕層狩り」への対抗策

岸泰裕です。

今回の選挙戦で、野党第一党や一部の政党が声高に叫んでいる公約をご存知でしょうか。
**「金融所得課税の強化(税率引き上げ)」**です。

「1億円の壁を打破する」
「金持ち優遇を是正する」

彼らの主張は、経済格差に苦しむ一般層のルサンチマン(妬み)を刺激し、票を集めるには最高のパフォーマンスです。
しかし、私たち投資家にとっては、これは**「資産没収予告」**に他なりません。

現在20.315%の税率が、もし25%、30%へと引き上げられたらどうなるか。
そして、選挙後に連立政権などが樹立され、与党が妥協案としてこの政策を飲む可能性はあるのか。
今回は、目前に迫る「富裕層狩り」のリスクと、緊急避難的な対抗策について解説します。

1. 「1億円の壁」という詭弁

政治家はよく「所得が1億円を超えると、税負担率が下がる(逆進性)」ことを問題視します。
これは、富裕層の所得の多くが、累進課税(最大55%)の給与ではなく、分離課税(一律約20%)の株の譲渡益や配当だからです。

しかし、これはリスクを取って資本を提供した対価です。
損失が出ても誰も補填してくれないリスクを負った結果のリターンに、給与と同じ高税率をかければどうなるか。
誰もリスクを取らなくなり、イノベーションも投資も止まります。

2. キャピタルフライト(資本逃避)は起きるか

もし日本で金融課税が30%になれば、間違いなく富裕層の海外流出が加速します。
シンガポールやドバイ、スイスなど、キャピタルゲイン課税がゼロ、あるいは低い国はいくらでもあります。

「日本から逃げるなんて非国民だ」と批判するのは簡単です。
しかし、合理的な投資家は、感情ではなく数字で動きます。
10億円の利益に対して、日本なら3億円取られるが、シンガポールなら0円。
この3億円の差は、移住のコストや手間を補って余りあるものです。

「出国税」の罠に注意せよ

ただし、政府も馬鹿ではありません。
すでに「国外転出時課税(出国税)」という制度があります。
1億円以上の有価証券を持つ人が海外へ移住する場合、**「出国時に全ての株を売却したとみなして」**含み益に課税する制度です。

もし今回の選挙で金融課税強化が決まれば、この出国税の条件も厳しくなる(対象額の引き下げや、不動産への適用など)可能性があります。
逃げるなら、門が閉ざされる「前」しかないのです。

3. 選挙後の現実的な「落とし所」

私の予測では、選挙結果がどうあれ、すぐに一律30%になる可能性は低いと見ています。
市場へのショック(株価暴落)が大きすぎるからです。

しかし、以下のような「段階的な改悪」は十分にあり得ます。

  • 「合計所得金額」への算入:配当控除や譲渡損益通算を使うと、国民健康保険料や介護保険料が跳ね上がる仕組みの強化。
  • 超富裕層のみの増税:「所得5億円以上」など対象を絞って税率を上げる(徐々に対象を下げていく布石)。
  • 特定口座(源泉徴収あり)の見直し:確定申告を義務化し、捕捉率を高める。

4. 結論:金融資産だけに頼るな

金融所得課税のターゲットは、あくまで「ペーパーアセット(株・投信・債券)」です。
ここで再び輝くのが、**「実物資産(アンティークコイン・金・アート)」**です。

これらは「金融商品」ではないため、売却益は「譲渡所得(総合課税)」となります。
「え? 総合課税なら最大55%じゃないか」と思うかもしれません。
しかし、実物資産には**「長期譲渡所得(保有5年超で課税対象が半分になる)」**という強力な優遇措置が残されています。

また、保有している間の含み益は、証券口座のように画面に表示されず、誰にも捕捉されません。
「税制の変更に強い資産」を持つこと。
これが、ポピュリズム(大衆迎合)政治が暴走する2026年の、賢い資産家の防衛術です。

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