岸泰裕です。
2026年1月。ついに、恐れていた事態が現実のものとなりました。
日銀による本格的な利上げを受け、これまで「史上最低水準」を謳歌してきた住宅ローンの変動金利が、明確に上昇気流に乗ったのです。
「まだ0.数%上がっただけでしょう?」
「銀行が激変緩和措置(5年ルール、125%ルール)を用意してくれているから大丈夫」
もし、あなたがこのように楽観視しているとしたら、資産防衛の観点からは「赤点」と言わざるを得ません。私の元へ個別相談に来られる準富裕層の方々の中にも、この金利上昇局面を甘く見て、将来の資産形成計画に狂いが生じ始めているケースが散見されます。
今回は、インフレと金利上昇が定着した2026年の日本において、「住宅ローン破綻」予備軍にならないために、そして大切な資産を守り抜くために、今すぐ打つべき冷徹な対策について論じます。

1. 「金利のある世界」のリアル。もはや過去の常識は通用しない
まず、認識を改めるべきは「金利は上がらない」という、過去30年間のデフレ思考です。2026年の今、日本は明らかにインフレ経済へと構造転換しました。物価が上がれば、通貨の番人である中央銀行は金利を上げざるを得ません。これは経済の原則です。
変動金利上昇のインパクトを直視せよ
例えば、残債5,000万円、残期間30年の住宅ローンを抱えていると仮定しましょう。
金利が0.5%から1.5%へ、わずか「1%」上昇しただけで、どのような影響が出るでしょうか。
- 毎月の返済額:約14.9万円 → 約17.2万円(+約2.3万円)
- 年間負担増:約27.6万円
- 30年間の総支払額増:約830万円
いかがでしょうか。月々の手取りから2万円以上が消え、生涯では高級外車1台分以上のお金を余分に銀行へ支払うことになるのです。
これが、都心のタワーマンションなどで1億円以上のローンを組んでいるパワーカップルであれば、影響額はさらに倍増します。
「5年ルールがあるから当面は返済額が変わらない」というのは、問題の先送りに過ぎません。その間も、元本の減りは遅くなり、最終的な支払総額は確実に膨れ上がっています。これは「見えない借金の増加」に他なりません。
2. 「繰り上げ返済」は正解か? インフレ下での現金の価値
金利上昇局面で、真っ先に検討されるのが「手元の現金で繰り上げ返済をして、元本を減らす」という選択肢です。
確かに、借金が減れば将来の利息負担は軽減されます。心理的な安心感も大きいでしょう。
しかし、資産コンサルタントの立場から言えば、2026年のインフレ下において、安易な繰り上げ返済は「最適解」ではないケースが多いのです。
インフレは「借金の実質価値」を目減りさせる
ここが重要なポイントです。インフレとは「モノの値段が上がり、現金の価値が下がる」現象です。
例えば、年率3%のインフレが続けば、現在の1,000万円の価値は、10年後には実質740万円程度まで目減りします。
これは、あなたが銀行から借りている「5,000万円の借金」の実質的な価値も、時とともに目減りしていくことを意味します。インフレ下において、固定された金額の負債を持つことは、実は債務者(借り手)にとって有利に働く側面があるのです。
逆に、虎の子の現金を繰り上げ返済に充てるということは、「将来価値が下がる借金」を返すために、「今現在最も価値が高い現金」を手放す行為とも言えます。さらに、手元の流動性を失うことで、病気や失業といった不測の事態への対応力が低下するリスクも忘れてはなりません。
3. 資産家の選択。「負債」を「資産」で相殺する戦略
では、真の資産家はどう動くのでしょうか。
彼らは「繰り上げ返済」ではなく、**「運用益による相殺」**という戦略を採用します。
考え方はシンプルです。
「住宅ローン金利の上昇分を上回る利回りで、手元の現金を運用すれば良い」という発想です。
「金利1.5%の負債」VS「利回り4%の資産」
仮に住宅ローン金利が1.5%まで上昇したとします。手元に繰り上げ返済用の資金が1,000万円あるとしましょう。
これを銀行に返済して年1.5%分の利息を節約する(=実質利回り1.5%)のと、手元に残して年率4%が期待できる資産で運用するのとでは、どちらが合理的でしょうか。
答えは明白です。
1,000万円を年利4%で運用できれば、年間40万円の利益(税引前)が生まれます。一方、ローン金利の上昇による負担増が年間30万円程度であれば、運用益で十分にカバーした上で、お釣りが来る計算になります。
もちろん、運用にはリスクが伴います。しかし、2026年の現在、世界にはインフレヘッジとなり得る、多様な投資対象が存在します。
- 安定したインカムゲインが見込める高配当株やREIT(不動産投資信託)
- 金利上昇局面で魅力が増す、高格付けの外国債券
- そして、通貨価値の下落に対して圧倒的な強さを発揮する、金(ゴールド)やアンティークコインといった実物資産
これらを適切に組み合わせたポートフォリオを構築することで、リスクをコントロールしながら、ローン金利を上回るリターンを目指すことは十分に可能です。
4. 結論:あなたのバランスシート(B/S)を最適化せよ
住宅ローン金利の上昇に直面した時、感情的に「借金は怖いから早く返そう」と反応するのは、金融リテラシーの低い人の行動様式です。
大切なのは、あなたの家計のバランスシート(貸借対照表)全体を見渡し、**「負債のコスト(金利)」**と**「資産のパフォーマンス(運用利回り)」**を天秤にかけることです。
- 住宅ローン金利が、あなたの運用スキルで出せる利回りよりも低い間は、無理に返す必要はない。(低コストで資金調達できている状態)
- 逆に、金利が運用利回りを上回りそうになった時、初めて繰り上げ返済を検討する。
この冷徹な計算ができるかどうかが、資産家とそうでない人を分けます。
私のセミナーや個別コンサルティングでは、お客様一人ひとりの資産状況、リスク許容度、そして将来のライフプランに基づき、「繰り上げ返済すべきか、運用すべきか」の最適な分岐点をシミュレーションし、具体的なポートフォリオ構築までサポートしています。
金利上昇は、準備なき者にとっては脅威ですが、戦略を持つ者にとっては、資産構成を見直し、より強固な財盤を築くための好機でもあります。世間の空気に流されることなく、ご自身の頭で考え、最適な戦略を選択してください。