岸泰裕です。
「まさか、日本国内で水道が止まるなんてことがあるわけがない」
「道路に穴が空いたら、役所がすぐに直してくれるのが当たり前だ」
2026年現在、この「当たり前」を信じている人は、あまりにもナイーブであり、資産防衛の観点からは致命的なリスクを抱えていると言わざるを得ません。
かつて北海道の夕張市が財政破綻した時、多くの日本人はそれを「特殊な事例」「対岸の火事」として消費しました。
しかし今、全国の地方自治体で起きているのは、派手なニュースにならない**「静かなる破綻」**です。
役所は開いている。職員もいる。
しかし、住民サービスの実態は崩壊しており、インフラは朽ち果てていく。
あなたの故郷や、安易に移住を考えているその場所が、物理的に「住めなくなる日」が近づいています。
今回は、不動産投資家としての冷徹な視点から、日本の地方消滅の現実と、資産価値ゼロどころかマイナスになる「負動産」を掴まないための防衛策について、3000文字超で徹底的に論じます。

1. インフラ維持の「2026年問題」とは何か
なぜ今、騒がれているのか。それは「物理的な寿命」と「財政的な寿命」が同時に尽きようとしているからです。
高度経済成長期のツケ
日本の地方インフラ(道路、橋、上下水道、公民館など)の多くは、1960年代から70年代の高度経済成長期に一斉に整備されました。
コンクリートの寿命は約50年〜60年。
つまり、2020年代後半の今、全国にある膨大な数のインフラが、一斉に「更新時期」を迎えています。
国土交通省の試算によれば、これらを維持・更新するコストは、今後数十年間で数百兆円にのぼります。
しかし、地方自治体の財布(税収)はどうなっているでしょうか。
人口半減と面積不変のパラドックス
人口はピーク時の半分近くまで減っている自治体も珍しくありません。
税収(原資)は半減しています。
ところが、維持しなければならない道路の総延長や、水道管の長さは、人口が減っても1メートルも短くなりません。
「住民一人当たりのインフラ維持コスト」が、かつての2倍、3倍に跳ね上がっているのです。
これを賄うには、住民税や水道代を3倍にするか、あるいは「インフラを捨てる」しかありません。
2026年の自治体は、後者を選び始めています。
2. 「居住誘導区域」の外側は切り捨てられる
行政用語で「コンパクトシティ化」や「立地適正化計画」という言葉を聞いたことがあるでしょう。
これは要するに、**「街の中心部に人を集め、それ以外のエリア(郊外や山間部)は見捨てる」**という宣言です。
「居住誘導区域」の外側に住んでいる住民に対して、自治体は冷酷な対応を迫られます。
- 「その集落に続く橋が老朽化しましたが、架け替える予算はありません。通行止めにしますので、迂回してください(あるいは退去してください)」
- 「水道管が破裂しましたが、直すコストが合いません。給水車で対応します」
- 「除雪車は、中心部を優先します。そちらに行くのは3日後です」
これはSFの話ではありません。すでに過疎地域で現実に起きている「行政サービスの撤退」です。
行政サービスが届かなくなった土地に、資産価値はありません。
売ろうにも買い手がつかず、ただ固定資産税の請求書だけが届く。
これが「負動産」の正体です。
3. 「田舎暮らし」という甘い罠
コロナ禍以降、「リモートワークができるから、空気のきれいな田舎で広い家に住みたい」というニーズが増えました。
YouTubeやSNSでは、古民家再生やスローライフのキラキラした情報が溢れています。
しかし、資産防衛の観点からは、**「インフラの裏付けのない土地」を買うのは自殺行為**です。
「安い」には理由がある
地方の古民家が「100万円」や「0円」で売られているのには理由があります。
それは建物の古さだけでなく、「将来的にインフラが維持されないリスク」が価格に織り込まれているからです。
下水道がなく浄化槽の管理が必要、プロパンガスが高い、土砂崩れのリスクがあるが対策工事が行われない…。
ランニングコストとリスクを計算すれば、都内の狭いマンションの方が、トータルコストで安くつく場合すらあります。
流動性リスク=人生の足かせ
不動産投資で最も恐ろしいのは「価格下落」ではありません。
**「流動性の喪失(売りたい時に売れない)」**ことです。
人生には何があるか分かりません。病気、介護、子供の進学。
現金が必要になった時、都心のマンションなら1週間で現金化できます。
しかし、過疎地の不動産は、1年待っても、価格をゼロにしても売れないことがあります。
売れない不動産は、あなたの移動の自由を奪い、資金繰りを圧迫する「足かせ」になります。
2026年、流動性の低い資産を持つことは、それだけで最大級のリスクなのです。
4. 生き残る自治体の見分け方
では、地方の不動産はすべてダメなのか?
そうではありません。地方でも「勝ち組」と「負け組」の二極化が進みます。
私が地方物件を見る際にチェックする「生存指標」は以下の3つです。
- 財政力指数:
「0.8以上」が一つの目安です。自前の税収でどれだけやりくりできているか。交付税頼みの自治体は、国の財布が厳しくなれば即死します。 - 人口動態(社会増減):
自然減(死亡>出生)は仕方ありません。重要なのは「転入>転出」になっているか。特に若年層や企業誘致に成功している「中核都市(福岡、仙台、あるいはTSMC特需の熊本など)」は生き残ります。 - コンパクトシティ政策の進捗:
「全域をまんべんなく守ります」というポピュリズム的な首長のいる街は危険です。「中心部は守る、郊外は畳む」という痛みを伴う決断をすでに下している自治体こそが、長期的には信頼できます。
5. 結論:ノスタルジーで資産を買うな
「故郷を守りたい」「実家を処分するのは忍びない」
その感情は理解できます。しかし、感情と勘定は分けてください。
実家が「居住誘導区域外」にあるなら、親が元気なうちに売却(あるいは贈与、放棄)の道筋をつけておくこと。
これから不動産を買うなら、多少高くても、行政サービスが将来にわたって約束された「都市部」を選ぶこと。
2026年以降、日本の国土は「人が住めるエリア」と「自然に還るエリア」に明確に分断されます。
あなたが持っている不動産権益は、どちら側の地図に載っていますか?
地図から消えゆく街と心中しないよう、冷徹な棚卸しを今すぐ始めてください。