【投資戦略】「オルカン一本足打法」の死角。地政学リスク時代を生き抜く、ポートフォリオの「防弾チョッキ

岸泰裕です。

「投資なんて簡単だ。毎月S&P500かオルカン(全世界株式)を限界まで買うだけ」
SNSで持て囃されてきたこの「株式100%・一本足打法」の戦略が、中東の戦火を前に悲鳴を上げています。

株式市場は平和と経済成長を前提とした資産です。
地政学リスクが顕在化し、インフレが再燃する今のフェーズにおいて、株式だけを盲信するのは、防弾チョッキを着ずに戦場を歩くようなものです。

今回は、個人のポートフォリオを企業財務(トレジャリー)の視点から再構築し、どんな有事のマーケット環境でも致命傷を避ける「アセットアロケーション(資産配分)」の最適解について語ります。

1. 「相関性の罠」に気づけ

投資の世界において最大の防御は「分散」です。
しかし、多くの人は「オルカンを買っているから世界中の企業に分散できている」と勘違いしています。
それは「株式という一つのアセットクラス(資産の枠組み)」の中での分散に過ぎません。

株が売られる時、一緒に下がる資産の無意味さ

米伊の軍事衝突のような巨大なマクロショックが起きると、アメリカの株も、ヨーロッパの株も、日本の株も、すべて連動して下落します。
これらは相関係数が高いため、有事の際のクッションにはなりません。

真の分散とは、「株が下落する時に、逆に価格が上がる(あるいは価値を維持する)資産」を組み入れることです。
これを持っていなければ、ポートフォリオ全体がマクロ経済の波に飲まれて沈没します。

2. 有事に光る「無国籍通貨」と「コモディティ」

では、株式のヘッジ(保険)となる資産とは何でしょうか。
代表的なものが「ゴールド(金)」と「コモディティ(原油や穀物などの実物資産)」です。

国家の信用に依存しないゴールド

株式や債券、あるいは法定通貨(ドルや円)は、発行元の国家や企業の「信用」の上に成り立っています。戦争や財政破綻が起きれば、その信用は紙屑になります。
しかしゴールドは、それ自体が実物としての価値を持つ「無国籍通貨」です。中東が火の海になり、インフレで紙幣の価値が目減りする時、世界の富裕層や中央銀行が最後にすがるのは、歴史上常にゴールドでした。

ポートフォリオの5%〜10%でいい。ゴールドやコモディティ関連資産を組み入れておくことが、有事の際の強力な「防弾チョッキ」として機能します。

3. 究極の非相関資産は「あなた自身の稼ぐ力」

しかし、忘れてはならない最強の資産がもう一つあります。
それは、金融市場(マーケット)とは完全に切り離された「あなたの人的資本(本業や副業で稼ぐ力)」です。

株価が半値になろうが、ゴールドの価格が変動しようが、あなたが毎月生み出す「給与」や「事業収益」というキャッシュフローは、金融市場の暴落から直接的な影響を受けません。
(もちろん不況によるリストラリスクはありますが、それは記事66で述べた通り、自身の専門性でヘッジできます)。

毎月確実にキャッシュを生み出す人的資本は、投資の世界で言えば「極めて利回りの高い超優良債券」と同じです。
この太い債券(稼ぐ力)を持っているからこそ、投資の世界で大胆なリスクを取ることができるのです。

結論:投資の目的は「増やす」ことではなく「生き残る」こと

平時の投資は「いかにリターンを最大化するか(増やすか)」のゲームです。
しかし有事の投資は、「いかにマーケットから退場せずに生き残るか」というサバイバルゲームに変わります。

全財産を一つのカゴ(株式)に盛るギャンブルはやめましょう。
現金、株式、ゴールド、そして人的資本。
性質の異なる複数の武器を組み合わせ、あらゆるシナリオに対応できる「全天候型のポートフォリオ」を構築する。
それこそが、企業財務のプロも実践する、地政学リスク時代を生き抜くための最も退屈で、最も確実な戦略なのです。

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